ジョージHWブッシュ大統領の手腕
Japan In-depth / 2018年12月4日 18時2分
宮家邦彦(立命館大学 客員教授・外交政策研究所代表)
「宮家邦彦の外交・安保カレンダー 2018 #49」
12月3-9日
【まとめ】
・ステーツマンシップを体現した最後の米大統領。
・戦争体験がもたらしたHWブッシュの政策判断。
・G20 米中・日露首脳会談で見えたもの。
【注:この記事には複数の写真が含まれています。サイトによっては全て表示されず、写真説明と出典のみ記されていることがあります。その場合はJapan In-depthのサイトでお読み下さい。】
現地時間の11月30日、第41代ジョージHWブッシュ大統領が94歳で亡くなった。8月末にはマケイン上院議員が逝去したが、米メディアは前回以上に、このブッシュ41の功績と人柄を偲ぶ追悼記事や特別番組を「これでもか、これでもか」と報じていた。あたかもトランプ氏の登場で失われた古き良きアメリカ政治を懐かしむかのように。
ちなみに、息子のジョージWブッシュも後に43代大統領となったが、日本ではこの親子を「ブッシュ・シニア、ブッシュ・ジュニア」とか「パパ・ブッシュと息子ブッシュ」などと呼んでいる。だが、米国ではミドルネームが異なる息子をジュニアとは呼ばない。ブッシュ41、ブッシュ43と呼ぶ方が一般的だ。まあ、どうでも良いことなのだが・・・。
ブッシュ41については今週のJapan Timesと産経新聞に追悼のコラムを書いたので乞う一読。筆者が在米日本大使館政治部に赴任したのは1991年10月、時の大統領がブッシュ41だった。当時からホワイトハウス記者会見の雰囲気は厳しかったが、決して敵対的ではなかった。今のような喧嘩腰のやりとりはちょっと記憶にない。
ブッシュ41は真の意味で米国の本質的に善良なエリート層出身のステーツマンシップを体現した最後の大統領だったと思う。その後の大統領は、クリントン(育ちが違う)、ブッシュ43(父親と同じにはなり切れなかった)、オバマ(出身や背景がまるで違う)、トランプ(全てが異様なほど違う)、誰であれブッシュ41には遠く及ばないからだ。
ブッシュ41は湾岸戦争の目的をクウェート解放に限定したが、ブッシュ43は父親が拒否した「バグダッド侵攻とイラクの政権交代」という禁断の提案を易々と受け入れてしまった。イラク戦争の首謀者はチェイニー副大統領とラムスフェルド国防長官だが、前者はブッシュ41政権の国防長官だった。チェイニーは確信犯だったのだ。
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