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漫画に描かれるスポーツについて スポーツの秋雑感 その7

Japan In-depth / 2018年12月8日 0時0分


▲写真 サッカー(イメージ)出典:Frickr; ..Russ...


しかしながら、漫画を不良文化財と見なす人は昔からいて、「子供がすぐ真似をする」というのがその論理だが、私はこうした意見には、昔から反対してきた。漫画と現実の区別をつけられるようになることが、すなわち成長すること、学ぶことの意味ではないのか、と。私が中学生だった頃、体育の正課で柔道があり、つまりは授業で柔道をやらされたわけだが、真面目にやる気にもなれなかったので、悪友と棒組になり、技などかかっていないのに、自分から派手に飛んで受け身を取る、ということを交互にやって喜んでいた。


はるか後年、20世紀も終わろうという頃に『柔道部物語』(小林まこと・著 講談社)という漫画を読んでみたら、まったく同じ事をする柔道部員が出てきたので、笑ってしまった。漫画の影響があろうがなかろうが、スポーツ精神や学校の授業を笑い事にしてしまうガキは、昔も今も大勢いるのだと思う。


ただ、矛盾したことを言うようだが、私自身がこの『柔道部物語』という漫画を読んで、あまり感心しないなあ、という感想を持ったことも事実だ。たとえば団体戦で、先鋒で出場した主人公が1勝をあげると、後に続く4人(次鋒、中堅、副将、大将)は、引き分け狙いで1−0の勝ちを目指す、という描写。柔道も今やれっきとしたスポーツなのであるから、ルールの範囲内でどのような勝ち方をしようが、非難されるいわれはないだろう。それは大前提として認めるけれども、人生の半分以上、武道の修練を積んできた身としては、こういう漫画が全国の柔道少年に歓迎されている限り、柔道が古来の武道の精神を取り戻す日は来ないのだろうな、というように考えてしまう。


この話は裏を返せば、漫画が与える影響というものを無視はできない、ということで、このように本質的な議論に踏み込むことなく、「勉強しないでスポーツや漫画に熱中する子供など、将来ろくなものにならない」などと決めつけても、そこからなにが生まれるものでもない、と私は言いたいのである。


話を戻して、昭和の子供たちにとって、みんなで楽しむスポーツと言えば野球であった。私が生まれ育ったのは東京の板橋というところだが、戦後の高度経済成長の時代、すでに都市化が急ピッチで進んでいて、かろうじて残った空き地で草野球をやるくらいしか、屋外の娯楽がなかった、と言った方が実態に近い。


そうしたわけで、野球漫画は皆が愛読しており、中でも『巨人の星』(原作・梶原一騎 絵・川崎のぼる 講談社)は、野球少年たちのバイブルと呼べる存在だった。


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