官民ファンド崩壊の教訓
Japan In-depth / 2018年12月23日 15時42分
嶌信彦(ジャーナリスト)
「嶌信彦の鳥・虫・歴史の目」
【まとめ】
・発足2か月で暗礁に乗り上げた「産業革新投資機構(JIC)」。
・官庁介入で国の意向を忖度するゾンビ機構になることを懸念。
・日本にはまだ真のベンチャーが育つ土壌がない。
【注:この記事には複数の写真が含まれています。サイトによっては全て表示されず、写真説明と出典のみ記されていることがあります。その場合はJapan In-depthのサイトhttps://japan-indepth.jp/?p=43312でお読み下さい。】
安倍政権の新成長戦略の目玉として位置づけていた“官民ファンド”が崩壊寸前だ。民間が手を出しにくい事業に“官”がお金を出し、新産業を育てるという狙いだった。2012年に構想され、現在14ファンドが設立されている。その中心的存在だったのが、前身の産業革新機構を改組して設立した官民ファンドの「産業革新投資機構(JIC)」だった。政府は今後約95%を出資する大株主として関与し、新設された他の官民ファンドはJICの系列下に入る計画だったという。
ところがJICの田中正明社長(元三菱UFJフィナンシャル・グループ副社長)がJICには「将来の産業競争力を強化するという理念で民間出身のプロが集まったのに、“官庁側に信頼関係を壊す行為がみられ、それが対立原因となって民間出身の取締役8人全員が辞任することになった”」と発表し、発足後二ヶ月半で休止状態となったのである。
▲写真 産業革新投資機構 前CE田中正明氏 出典:Japan Investment Corporation
対立の最大の原因は、最大1億円を超える役員報酬案を経産省が一旦了承しながら、内外から「高すぎるのではないか」と批判を受け撤回してしまったことにあったようだ。報酬については予算を担当する財務省が「高過ぎるのではないか」と批判し、この高額では国民の理解も得られない、と対立が表沙汰になり、さらにJICの下に孫ファンドをつくり自由度の高い投資を行なうことも考えていたが「孫ファンドの投資先や報酬体系が不透明」と批判され、情報開示やガバナンスのあり方にまで対立が広がっていた。
▲写真 世耕経済産業大臣・Programme Day 1, General Assembly 2018 出典:Flickr worldsteel
民間出身のJIC役員には冨山和彦・経営共創基盤CEOや坂根正弘・コマツ相談役らも社外取締役に入っていたが、官庁が介入してきたことによって、民間の最善の手法を活用する民間の官民ファンドでなく国の意向を忖度して運用する“官ファンド”へ変質してしまう。これでは国際的に活躍するベンチャー投資などは出来ない上に、国の意向を受けて不振産業を救済するだけの“ゾンビ”機構になってしまう。」として総退陣になったようだ。
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