名画で知るベトナム戦争の教訓
Japan In-depth / 2018年12月24日 17時0分
南ベトナムの山地での激戦の末に3人は北ベトナム軍(革命勢力)の捕虜となり、その敵の将校のロシアン・ルーレットの道具にされる。ロシアン・ルーレットとはもちろんピストルの1発だけ弾丸をこめ、弾倉をくるくる回して、引き金を引く、という危険なゲームである。映画では北ベトナム軍将兵が捕虜の米兵や南ベトナム政府軍将兵にこのゲームをやらせて、自分たちはカネを賭けて楽しむという残酷な設定となっていた。
だがマイケルたちはこのゲームでうまく北軍将兵を撃ち殺して、脱出する。やがて故郷に帰ったマイケルはスティーブが戦闘で両足を失い、帰還して療養中であることを知る。一方、行方不明となったニックがどうも南ベトナムの首都サイゴン(いまのホーチミン市)にいるらしいことを知ったマイケルは救出に向かう。
そのころ南ベトナムでは米軍が撤退し、北ベトナム軍が大軍事攻勢を打ち上げ、南政府を崩壊へと追い込んでいた。陥落が迫ったサイゴンではニックが中国系ベトナム人のギャングに麻薬中毒となって捕らわれ、ロシアン・ルーレットをさせられていた。やっとそんなニックをみつけたマイケルは必死で救出を図るが、彼の目の前でニックは自分の頭を撃ちぬいて死んでしまった。ニックの遺体は故郷の町で運ばれ、婚約者のリンダ(メリル・ストリープ)らに悼まれて葬られる。
マイケルは町の旧友たちとまた鹿狩りに出るが、かつては巨大な鹿をためらいなく仕留めたのに、こんどは獲物を目前にみながら、あえて殺さず、わざと逃がしてしまう。
以上のようなストーリーだった。出演するロバート・デ・ニーロやメリル・ストリープらは後に大スターとなっていくが、この映画はいわばその登竜門だった。そうした男優女優がすごい魅力を発揮したのだ。合わせて背景にベトナム戦争が迫真に描かれていた。戦闘場面や拷問場面はまさに息をのむ迫力だった。
さて私は戦時の南ベトナムで4年近くも過ごし、とくにサイゴン陥落というベトナム戦争の歴史的な終わりの場面を一部始終、渦中にあって、一部始終、目撃した。戦闘の前線にも何度も身を運んだ。『ディア・ハンター』の主舞台を実体験したわけだ。その全体験は『ベトナム報道1300日』(筑摩書房刊、後に講談社文庫)という本にまとめて書いた。
▲写真 『ベトナム報道1300日』古森義久著(講談社文庫)
そんな体験を基にしながらも最初に『ディア・ハンター』を当時の新たな勤務地のワシントンで観たときは、ただただ映画の勢いに圧倒された。劇中の登場男女の魅力に引き込まれ、ストーリーの展開に吸い込まれた。
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