北朝鮮金委員長の茶番劇続く~2019年を占う~【北朝鮮】
Japan In-depth / 2019年1月2日 23時0分
宮家邦彦(立命館大学 客員教授・外交政策研究所代表)
「宮家邦彦の外交・安保カレンダー 2019 #01」
2019年1月1-6日
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謹賀新年
今年最初となる本原稿は珍しく元旦に書くことにした。金正恩朝鮮労働党委員長が早速、朝鮮中央テレビを通じ「新年の辞」を発表したからだ。昨年は彼の「新年の辞」で大いに振り回されただけに、今年彼が何を言うかについては関係者の間で関心が高まっていたのだが、結論としては内容的にあまり進展があるとは思えない。
産経新聞によれば、金委員長は、①朝鮮半島に恒久的な平和体制を構築し、完全な非核化に進もうとすることは、党と政府の不変の立場で、私の確固たる意志だ、②既にこれ以上、核兵器をつくりも実験しもせず、使いも広めもしないと宣言してきた、と述べたそうだ。
おいおい、こうした言い方、昨年とどこが違うのか、全く変わっていないのではないか。問題は「朝鮮半島」ではなく、北朝鮮の完全な非核化であり、問題は「これ以上」の製造・実験・使用・拡散ではなく、北朝鮮の核兵器そのものの廃棄である。原理原則が巧妙にすり替えられてきた昨年の教訓を我々は学ぶべき時期に来ている。
▲写真 北朝鮮軍事パレード 2018年2月11日 出典:Tasnim News Agency (Public Domain)
また同委員長は、③トランプ米大統領といつでも再び向き合う準備ができており、必ず国際社会が歓迎する結果を出すために努力する、と述べる一方、④米国が約束を守らず、一方的に何かを強要しようと制裁・圧迫に出れば、やむを得ず自主権と国家の最高利益を守るため、新しい道を模索せざるを得なくなるかもしれない」とも述べた。
要するに、逸るトランプ氏の足下を見つつ、交渉破綻の可能性を示唆してトランプ氏を揺さぶり、決断を促そうということだろう。トランプ氏はこの種の戦術に極めて脆弱だったから、近いうちに第二回米朝首脳会談に突っ走るのではないか。ケリー、マティスが去った今、これを止められる米政府高官はもう残っていないだろう。
更に同委員長は、⑤米側には我々(北朝鮮)の主導的・先制的努力に対する信頼性ある措置を改めて求めるとともに、⑥南北関係については「驚くべき変化」に「満足」しており、南北協議による合意は事実上の不可侵宣言である、⑦開城工業団地と金剛山観光をいかなる前提条件や対価なしに再開する用意があるとも表明した。
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