国際情報分析 継続的に公開情報を読む大切さ
Japan In-depth / 2019年1月10日 18時0分
宮家邦彦(立命館大学 客員教授・外交政策研究所代表)
「宮家邦彦の外交・安保カレンダー 2019 #02」
2019年1月1月7-13日
【まとめ】
・金委員長のスタイルの変化は政策の方向性の変化の表れ。
・韓国海軍艦船問題から見る国際情報分析の真髄。
・錯綜する米国のシリア撤退に関する情報。
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先週は元旦早々、金正恩労働党委員長が発表した「新年の辞」を取り上げ、「内容的にあまり進展があるとは思えない」などと断じてしまった。勿論、間違った分析ではないが、今週は国際ニュースを読む際の最低限の心構えについて書きたい。まずは、流石に専門家は別の視点で見ているのだなと痛感させられた記事からご紹介する。
筆者は朝鮮半島の専門家、同氏は金委員長が「新年の辞」演説の中で、「国民に初めて『核兵器の製造中止』と『核の不使用』、『核不拡散』を語った『衝撃は大きい』」と指摘する一方、演説から「『主体思想』なる語が消え、軍を評価する言葉がなかったのは、奇妙」とも述べている。なるほどね、確かに言われてみれば、そうだろうね。
更に同氏は、金委員長が「執務室でソファーに座り、テレビカメラに向かった」スタイルは「父親や祖父の権威から離れ自らの権威が確立した」と「老幹部や軍幹部に世代交代を宣言する演説スタイル」だったとも指摘する。彼の分析の是非もさることながら、より重要なことは、こうした「公開情報を継続的に読み込む分析」の説得力である。
確かに金委員長は政策の方向性を変えたいのだろう。公開情報の蓄積による分析はかくも強いのだ。問題は同委員長が政策変更を対外的譲歩なしに行おうとしていること。実に虫の良い話だが、その点では韓国国防省だって立派なもの。レーダー照射問題は当面解決しそうにないが、もっと気になるのは日本の専門家・識者のコメントだ。
韓国海軍艦船の内部で何が起きたかは正直言って現時点では公開情報がないので分からない。されば今は推測で論じるしかないのだが、軍事知識の乏しい経済評論家の推測ほどいい加減なものはない。それは筆者も身に染みて知っている。海上自衛隊OB達ですら言うことが微妙に違う。この問題で即断、決め付けは禁物なのだ。
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