半世紀ぶり「反乱の年」となるか(下)~2019年を占う~【内政】
Japan In-depth / 2019年1月12日 11時0分
そこへ、前半でも指摘した消費税率引き上げが、いよいよ実行に移される。これはどう考えても、一時的な景気の減速があったとしても、その後には2020年東京五輪が控えているわけだから、莫大な公共投資の効果が現れ、しっかりと景気を底支えしてくれる、という読みだろう。
たしかに、その通りになる公算は高い。けれども、一体どれだけの人がその恩恵に浴せるのか、という問題を立ててみたならば、まったく異なる景色が見えてくるのではあるまいか。
このことは、米国のトランプ政権にも共通している。「アメリカ・ファースト」を掲げた彼の政策によって、米国の景気は回復してきた、と報じられてきたわけだが、その裏で、実は失業率の方が「下げ止まって」しまったのだ。
その結果、トランプ政権になってからの2年あまりで、それ以前は漸減傾向にあったホームレス人口は増加に転じ、2018年のクリスマスは、全米で55万人以上が帰る自宅のないまま過ごしたという。
▲写真 ホームレスの男性 イメージ画像 出典:Pixabay
データの上でいくら景気が回復しても、低所得層の賃金が増えず、かつ不動産価格の高騰(これもしばしば、景気回復の指標とされる)のせいで、最低賃金では大都市でアパートを借りるのが不可能になったから、こういう数字が出てくるわけだ。
私の記憶が確かならば、ドナルド・トランプという人は、今まで忘れ去られていた、低所得の白人労働者を救う、という政策を掲げて票を集め、大統領選を制したのではなかったか。
もっとも米国の場合、ホームレス=路上生活者というわけではない。公共のシェルターで生活する人も多いし、州によってはトレーラーハウスの住人までが、法的に住宅の要件を満たしていないので、ホームレスにカウントされてしまう場合があるそうだ。
それに、米国の福祉はお粗末だという印象が強いが、実際のところは低所得者には、フードスタンプという事実上の配給制度があって、それなりのセーフティーネットはちゃんと機能している。
むしろ日本の方が、貧困もなにも「自己責任」で片付けてしまう傾向が強いのではあるまいかと、私には思えるのだが、どうだろうか。問題は、こうした「自己責任」という見方が、当の若年貧困層にまで浸透していることで、数年前にいわゆる派遣切りが問題となった際にも、職も住居も失った若者の多くが、こうなったのは自分が悪い、と答えていた。
そうではなくて、巨万の富を手にする「勝ち組」がいる一方で、いくら働いても結婚すらできない身の上の若者が多いのは、世の中が間違っているのだ、と考え始める人たちが、そろそろ出てくるのではないだろうか。
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