「非核化ショー」の裏で粛清続く北朝鮮
Japan In-depth / 2019年1月18日 23時0分
また脱北を阻止するために、中朝国境には鉄条網が張りめぐらされ監視カメラが設置された。そして相次ぐ外交官の亡命に激怒した金正恩は、防止策として海外派遣の外交官全員にGPS付き腕時計の装着を義務化したとのことだ。まさに国全体が監獄状態となっている。
住民に対する統制強化だけでなく側近幹部に対する粛清・処刑も「不正腐敗の摘発」との名目で頻繁に行われている。
■ 護衛総局幹部まで処刑
2018年の平昌冬季五輪が終了した頃から南北融和が加速したが、この融和の裏で粛清はむしろ強化された。
ヒョン・ジュソン人民武力省後方局検閲局長(人民軍中将)は4月10日、戦時物資の総合検閲をする際、西海(ソヘ、黄海)ロケット発射試験場供給用燃油実態を点検しながら「もう緊縮しながらロケットや核兵器を開発する苦労をしなくても済む」と述べたが、これが党の先軍路線に反対する利敵行為発言だとして問題視され、金正恩によって平壌市順安(スンアン)区域の姜健(カン・ゴン)軍官学校射撃場で公開処刑された。金正恩は死刑を命じた時、「我々は理念的な中毒の芽を摘み取らなければいけない」と述べたという。
同じく4月には金剛開発総局への検閲で社長が「不正行為」で処刑され、総局の党責任幹部とその側近2名も処刑された。5月~6月は米朝首脳会談のために粛清を自粛していたが、米朝首脳会談後の7月に入って再び検閲が行われ粛清が強化された。7月から8月にかけて人民軍後方総局が検閲され幹部6名が粛清された(処刑されたとの情報もある)。
10月には護衛総局が組織指導部によって検閲された。この検閲については「内乱陰謀」があったのではとの噂が流れた。11月1日からは軍の新年度訓練が始まるのだが、「2・8文化会館」に軍幹部が集められ、バスで美林飛行場(平壌にある軍飛行場)につれて行かれた。そこには護衛司令部傘下の平壌市防衛司令部の司令官と政治委員など数名が縛られていた。彼らは集められた軍幹部たちの前で不正腐敗の名目で処刑された。処刑された幹部たちは金日成の母親である康盤石系列だったという。
このような権力中枢、それも金正恩警護機関の人物まで処刑される者が出るのは異例のことである。こうしたことから「不正腐敗」ではなく何らかの「陰謀」があったのではとの噂が流れたのである。
▲写真 金日成、金正日親子の像(平壌 2012年4月16日) 出典:Tormod Sandtorv flicr
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