仏陸軍スコーピオン計画と陸自装甲車調達(下)
Japan In-depth / 2019年1月20日 23時32分
だが陸自の装甲車輌は、旧式化に任せるままであり、能力的に時代遅れで稼働率も低い。また古い部品を調達しなければならないので、維持費用も高くつく。
近年調達された10式戦車にしても、16式機動戦闘車にしても個別に開発され、陸自全体のポートフォリオの中でどのような役割を果たすか検証されていない。また両車輌はネットワーク化されているが、中隊レベルに過ぎず、他の装甲車輌や普通科など他の兵科とのネットワーク化がなされる予定もない。また4輪の軽装甲機動車は容積がなく、小隊長車以外は無線機すら搭載されていない。このため近代化やネットワーク化の余裕はない。
繰り返すが陸自には装甲車輌調達の総合的な計画がない。新型車輌の開発は個別最適化となるので、他の車種との調整や、既存車種の後継を統合することがしにくい。その上、仏陸軍のような諸兵科を連合した大隊戦闘団や旅団レベルでのネットワーク化もできないし、計画もない。
また陸自全体で例えば5年、10年という単位で装甲車輌にどの程度の予算を投じて、それをどのように割り振るのかという予算の優先順位や割り振りも決められない。また調達が一定期間に終了しないと、その後の近代化もできない。
しかもネットワークの中核になるであろうNEC製の広帯域多目的無線機は通じないと現場での評判が悪い。これを放置したままでは仮に、陸自のネットワーク化が完了しても意味が無い。その原因の一つは自衛隊の使う周波数帯が軍用無線に適していないことが上げられる。これは東日本大震災の時にも問題となったが、防衛省、自衛隊は総務省に掛け合って変更することもなく、広帯域多目的無線機を実用化し、調達を開始してしまった。これで果たしてネットワークセントリックなこれからの戦場で戦えるのだろうか。
更に深刻なのは個々の装甲車輌含む装備の調達計画が事実上存在しないことだ。10式戦車にしても、16式機動戦闘車にしも、それぞれ何輌を、いつまでに調達して何個中隊分の戦力を整備し、総額がいくら掛かるのかという計画が存在しない。
一応陸幕は内部の見積もりはしているが、これが公にされることない。当然、政治家も国会も知らない。10式戦車がいつまでに、何のために何輌必要なのか国会議員は誰も知らない。それなのに予算がつけられて、漫然と調達が開始される。これでは調達計画が存在しているとは言えない。他国ではあり得ないことだ。事実筆者が外国の軍関係者にこの話をすると皆一様に驚く。まさに「自衛隊の常識は世界の軍隊の非常識」なのだ。
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