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仏陸軍スコーピオン計画と陸自装甲車調達(下)

Japan In-depth / 2019年1月20日 23時32分

文民統制の根幹は軍の人事と予算を政治が監督、管理することだ。国会が、自衛隊が何の目的のために、その装備が必要か、またその目的を実現するためいつまでにどのくらいの数が、いつまでに必要か、その総額はいくらかも知らないで予算をつけるのは文民統制を自ら放棄しているのに等しい。


調達される装備がいつまでに必要なのか決まっていないということは、その装備の必要性自体が怪しいということだ。調達の完了がいつでもいいと言うのは、計画自体が存在せず、対処すべき脅威が存在しないということになる。換言すると国防のためにその装備を調達するのではなく、装備調達自体が目的化していると言っても過言ではない。またそれは自衛隊の当事者意識と当事者能力の欠如でもある。


装備調達に締め切りがないため、ダラダラと装備調達は長引き、調達が完了しない。例えば87式偵察警戒車の調達は1987年から開始され、終了したのは2013年で、26年も掛かっている。他国ではこのような長期の調達はあり得ない。これがまだ当初から26年掛かるという計画ならまだしも、調達開始前には誰も2013年まで掛かるとは知らなかった。最後に調達された87式は完全に旧式化している。しかもこれを諸外国の同様の装甲車の何倍も高い単価で調達してきたのだ。予算がいくらあっても足りる訳がない。だから給食や兵站、需品などの充実が軽視されることになる。


例えば当初から16式機動戦闘車開発に際してはファミリーを前提として87式偵察警戒車、82式指揮通信車、96式装甲車などの後継を一車種のバリエーションにすべきだった。そうすれば量産効果も出て、メーカーの仕事量も確保できてラインを維持しつつ、調達単価を下げ、整備、教育、兵站コストを劇的に下げることができただろう。これは防衛産業の生産基盤を維持する上でも大きなメリットとなったはずだ。逆にそれをしないから、調達が不効率になり、値段があがり、調達数が減って、メーカーの売り上げも苦しくなるという悪循環に陥っている。



▲写真 96式装輪装甲車 出典:flickr(JGSDF:陸上自衛隊)


昨年はコマツが受注した新型8輪装甲車がキャンセルされたが、陸幕や装備庁の開発や調達に関する当事者意識と能力が欠けていると言わざるをえない。これは陸幕が開発予算も払わずに、コマツと三菱重工に開発を先行させて、勝った方にだけ開発費を払うという、メーカーにリスクを押しつける方式となっていたこと。しかも払われた金額は開発と試作車輌5輌併せて18億円に過ぎない。これではまともな開発は不可能である。開発費が出ない理由のひとつは調達単価が高く、それに予算を取られるからだ。逆にキチンと計画をたてて、開発費や、調達単価、調達期間の計画を割り振るならば、相応の開発費は捻出できるはずである。


陸自の装甲車調達は、大計画を定めて、それに沿って各種装甲車の開発や生産(あるいは輸入)を決定し、調達期間のタイムテーブルも決めておくべきだ。併せて陸自のネットワーク化も一気に進めるべきだ。また個別最適化を図るのではなく、できるだけ複数の車種を集約して整備、教育、兵站の負担の削減を行うべきである。そうしないと国内の装甲車輌生産基盤自体が失われることになるだろう。


(上の続き。全2回)


トップ写真:89式装甲戦闘車 出典:flickr JGSDF:陸上自衛隊)


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