英国新聞事情(上)~ロンドンで迎えた平成~その1
Japan In-depth / 2019年1月26日 13時41分
かの国ではまた、中産階級はラグビーやクリケットを好み、もっぱら労働者階級がサッカーを好むとされ、こちらの話は昨今わが国でもよく知られるようになってきたようだが、本当は例外などいくらでもある。
▲写真 Huntingdonshire District Councilチームのクリケットの様子 出典:U.S. Air Force photo by Tech. Sgt. Chrissy Best
これに対して、新聞の選択にはあまり例外がなく、逆に言うと、どの新聞を好んで読むかで、その人の出身階級や政治的立場を推し量ることができると考えられていた。前にも述べたように、差別と受け取る人はほとんどいなかったが、かの国で昔から言われる「ゼム・アンド・アス=彼らは彼ら、我々は我々」という「区別」は厳然と存在した。
日本のマスコミの特派員が、ロンドンで知り合った英国人ジャーナリストから、「こちらでは新聞はなにをお読みになりますか?」などと突然尋ねられて当惑した、などという話も、よく耳にしたものだ。
ちなみに私自身はと言うと、留学生だった頃は『ガーディアン』を読み、後に『インディペンデント』に変えた。政治的主張を表に出さない、ということを売り物にした高級紙で、ロンドンにおいては外国人ジャーナリストという立場になったので、新聞は必要十分な情報源でさえあればよかったのである。
……こうして、当時を思い返しただけで、30年という時が流れたのだなあ、という感慨を禁じ得ない。今や、ここで名前を挙げたブランケット判の日刊紙は、いずれも休刊したり、タブロイド判に転向して生き残りを図っている。
読者ご賢察の通り、電子メディアとの競争に、ことごとく敗れ去ったのだ。電子版の発行は今も続けているが、無料でニュースが読めるメディアがいくらでもあるとなると、生き残るのはいかにも厳しい。
昨今の日本でも、電車の中で新聞を広げている人は減る一方で、みんなスマホを見ているが、日本の新聞の場合、海外ではあまり例のない宅配制度によって支えられているので、すぐに英国の日刊紙の後追いになることもないだろう。もちろん、10年、20年というスパンで見たならば、明るい未来など思い描くことはできないが。つくづく、わが国の元号で言う平成の30年間というのは、インターネットが情報の世界を制した時代だったのだな、と思う。
▲写真 情報収集はPCかスマートフォンから(イメージ図)出典:pixabay; FirmBee
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