英国新聞事情(上)~ロンドンで迎えた平成~その1
Japan In-depth / 2019年1月26日 13時41分
天皇の病状が深刻、という情報がもたらされたのが、1988年の秋のことだったが、我々も編集会議で「Xデー」に備えることに決定した。その新聞は週刊だったのだが、いつでも号外を出せるようにしよう、というわけだ。
問題は情報を得る手段で、当時はまだインターネットが普及していない。日本に国際電話をかけて、友人から情報を聞き出す他はなかった。もう少し具体的に言うと、ロンドンと東京とでは時差が9時間(サマータイムの間は8時間)あるので、夜9時過ぎに電話をすると、ちょうど正午のニュースを見たばかりの友人や親族に連絡が取れる。その時点で大きな動きがなければ、その日の仕事は終わり、ということになった。
今思えば、よくもあんなプリミティブな方法で新聞が作れたものだが、当時のロンドンでは『英国ニュースダイジェスト』というその新聞は、在英日本人の間ではもっとも広く読まれていたのである。
この時期、毎晩編集部に残っていたのが、私ともう一人、契約ライターとしてロンドンの演劇事情を中心にコラムを書いてもらっていた小山内伸氏であったが、彼はまだ昭和のうちに帰国し、朝日新聞社に中途入社した。今では演劇評論家として活躍している。
こうして1988(昭和63)年が暮れ、いよいよ平成元年となる1989年を迎えることになったわけだが、この過程で、英国での新聞報道を通じて、あらためて考えさせられたことがあった。昭和天皇の戦争責任問題である。この話は、次回もう少し詳しく。
(中に続く)
トップ写真:新聞(イメージ図)出典:flickr;Jon S
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