英国新聞事情(中)~ロンドンで迎えた平成~その1
Japan In-depth / 2019年2月2日 14時47分
タブロイド判の大衆紙にも同様の傾向があって、代表的な例としては『デイリー・ミラー』紙が労働党よりであるのに対し、この『サン』というのは右翼と見なされている。国粋主義で反EU、移民をはじめ有色人種に対しては差別的な表現もいとわない新聞だ。
したがって、昭和天皇を戦争犯罪人と決めつけて「ヒロヒットラー」などという書き方をするのも、これが初めてのことではなかった。
しかしながら日本人にとっては。やはり時期が時期だ、という問題があったのだろう。駐英日本大使館が、同紙に抗議文を送りつけたのである。さらには本国においては、外務省が英国の駐日大使を呼びつけて「遺憾の意」を示した。
英国側のリアクションだが、まず後者について言えば、今思えば当たり前だが、「英国は言論の自由が保障された国家である」との一言で突っぱねられてしまったし、前者の『サン』紙への抗議文に至っては、まんまと彼らの商売に利用された。
「ジャップ(平気でこの言葉を使うのだ)が本紙に抗議」などという大見出しと共に、大使の署名がある抗議文の写真を掲載し、「我々は英国と日本との友好関係は尊重するが、だからと言って過去を忘れたわけではないのだ」という趣旨の記事を掲載した。
最近も、どこかの国との間で似たような応酬を耳にするが、英国の大衆紙はさらに念が入っていて、日本大使館と『サン』紙の主張のどちらが正しいか、自分たちの読者に投票を呼びかける(!)という企画まで打ち出した。もちろん翌日の大見出しは「数万人が本紙を支持」となったわけで、彼らの商売に利用された、という私の評価は、この事実を踏まえたものである。「営業右翼」の言うことに公的機関がわざわざ取り合うから、こういう結果になるのだ。
それはそれとして、私もジャーナリズムで働く一人の日本人として、日本の外交官たちのこうした言動には、違和感を抱かざるを得なかった。前述のように『サン』という新聞がひどい書き方をするのは、これが初めてのことではない。日英の貿易摩擦が深刻化した1987年には「イエロー・ペリル(黄禍)」などという大見出しとともに、日本のいわゆる非関税障壁への悪口雑言を並べ立てた。いわく、「彼らは高速道路の駐車スペースひとつとっても〈我らのジャガー〉には小さすぎる物を作っている」等々。
アホとしか言いようがないが、このように、たとえアホな論旨であれ、日本人一般が侮辱されている時には黙って見過ごしておいて、天皇の悪口を書かれたとなったら大使自らが抗議文を送りつけるとは、どういうことか。
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