英国新聞事情(中)~ロンドンで迎えた平成~その1
Japan In-depth / 2019年2月2日 14時47分
しかもその抗議文の中で、昭和天皇を「我らの元首」と明記していた。空気読めよ、という言い方が流行するのは、もう少し後の話になるが、外交官といえど公務員には違いないのだから、まずは日本国憲法読めよ、と言いたくなるではないか。日本国は主権在民ではないのか。
そこで私は、前述の『英国ニュースダイジェスト』で、こうした問題を指摘し「外務省・大使館の大誤爆」と題した記事を掲載した。この記事については、対照的なふたつのリアクションがあったので、報告しておく。
まずは日本共産党の機関誌『赤旗』で、ロンドン特派員電(いたのか……!)として。この記事が紹介された。やはり日本国内では、こういう声が封殺されていたのだろうか。
もうひとつは『朝日新聞』のロンドン特派員(当時)から、「林君は、ずっとこっち(英国)にいた方がいいと思うよ」と忠告されたことだ。日本であんなこと書いたら、右翼に襲撃されちゃうよ、ということであった。当時の私はまだ30歳前の血気盛りで、「右翼が怖くてパチンコ屋に行けるか」などとうそぶいていたものだが、実際にこの半年ほど前、1987年5月3日には『朝日新聞』の阪神支局が散弾銃を持った人物に襲われ、記者2人が死傷した、世に言う「赤報隊事件」が起きていた。同紙の記者の眼に私の言動は、怖い物知らずにもほどがある、と映ったのかも知れない。
▲写真 赤報隊事件で2人の記者が殺傷された朝日新聞阪神支局 出典:Wikimedia Commons; ABNOIC
このように私にとって昭和の終わりとは、一方で過去の戦争責任と向き合い、他方で日本国内に今も根強くある「天皇タブー」と向き合う日々であった。そして、1989年1月7日、いよいよ「Xデー」がやってきた。
(下に続く。上)
トップ写真:昭和天皇記念館 出典:Frickr;Hayato.D
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