軽率と沈黙の悪しき混交 対露外交を危ぶむ
Japan In-depth / 2019年2月4日 11時0分
島田洋一(福井県立大学教授)
「島田洋一の国際政治力」
【まとめ】
・「対中国で日露共同対処も念頭」総裁補佐の軽率発言が交渉に影響。
・ラブロフの暴露に反論なし。河野外相の沈黙が露を勢いづかせる。
・与党内から「交渉をいったん打ち切るべき」との声上がるのも当然。
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1月29日に開かれた自民党外交部会・外交調査会合同会議で、政府の対ロシア外交姿勢に関し、「交渉をいったん打ち切るべきだ」との厳しい声も上がったという。当然の懸念だろう。
安倍首相が、領土問題での妥協を視野に日露平和条約締結に積極的なのは、「中露が緊密に手を組む事態だけは避けなければならない」との意識があるためだという。
確かに、ロシアに敵対的な政策を取れば、中露がより手を組む事態を招くだろう。しかし逆は必ずしも真ならずで、ロシアに宥和的な政策を進めたからといって中露の離反を進められるとは言えない。
プーチン氏には、日本から取れるだけのものを取り、中国からも取れるだけのものを取るという冷徹、いや冷酷なリアリズムがある。情の外交など通じない。駒のように動かせる相手でもない。
ところが1月8日、自民党の河井克行総裁外交特別補佐が、ワシントンでの講演で、ロシアとの交渉には、「中国の脅威に日露が共同対処することも念頭にある」として米国側の理解を求めたという(産経新聞1月9日)。認識が甘い上、それを公の場で口にする軽率さに驚かざるを得ない。実際、すぐさま外交に悪影響を与えている。
▲写真 講演する自民党・河井克行 総裁外交特別補佐(2019年1月8日ワシントン)出典:河井克行氏のブログより
1月14日の日露外相会談後の記者会見で、ロシアのラブロフ外相と記者団の間で次のようなやり取りがあった(ハフィントン・ポスト日本版に拠る)。
〈記者〉自民党の河井克行総裁外交特別補佐の発言について、河野太郎外相はなにか話しましたか。また、それらに対するロシアの立場はどうでしょう。
〈ラブロフ〉河井氏の発言については、中国への対抗勢力を強化することになると。彼はそう表現したそうですが。穏やかではない発言です。本日、私たちは率直に日本側にそう伝えました。
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