軽率と沈黙の悪しき混交 対露外交を危ぶむ
Japan In-depth / 2019年2月4日 11時0分
日本側はこう答えました。「そのジェントルマンは行政当局者ではない。彼は自民党の総裁補佐です」と。まあ、そうなんでしょう。不幸なことに、その総裁が安倍首相だったと。私たちは厳重に警告しました。そのような発言は受け入れられないと。気になったのは、日本は独立国家でありながら、アメリカに頼りながら問題を解決するかもしれないのか、ということです。(以上、引用終わり)
河井氏の思慮を欠く言動が、ロシア側の居丈高な姿勢に正当化の根拠を与えていることがよく分かる。
▲写真 ラブロフ外相(左)と河野外相(右)による日露外相会談(2019年1月14日モスクワ)出典:河野太郎氏facebook
逆に、ひたすら沈黙するだけの河野太郎外相の消極姿勢もロシア側を勢いづかせた。
同じ記者会見で、「国連憲章107条(いわゆる敵国条項)は、第二次大戦の結果を認めよとしており、再度詳しく日本側に伝えた。反論はなかった」などと強調したラブロフ氏に対し、河野氏はその後に開いた記者懇談の場で、「内容は対外的に公表しないことにしている」と繰り返すのみだった。先にラブロフ氏が一方的に内容を暴露しているにもかかわらずである。柔軟性、戦略性、積極性、いずれにも欠けた対応という他ない。
当日のニュースは、NHKはじめラブロフ発言を一斉に大きく報じた。日本の青少年は、ロシア側の歴史プロパガンダに一方的に晒されたことになる。河野氏から何ら発信がなかった以上、報道を責められない。安倍・プーチン間に信頼関係が成り立っているというなら、外相間では公然たる応酬を辞さない姿勢で臨むべきだった。
▲写真 ロシア外務省・ザハロワ報道官(2019年1月31日)出典:ロシア外務省ホームページ
会談前日に、ロシア外務省のザハロワ報道官が、「最も驚いたのは、協議の前日になって日本が共同記者会見を開かないよう頼んできたことだ。日本側は代わりに日本メディア向けの非公開説明をするという。日本は不安定な情報環境を作り出して人々を惑わす一方、協議の結果を記者会見で伝える意思はない。奇妙で矛盾した行動だ」と強いジャブを放ってきている。遅くともこの時点で、ラブロフ氏は暴露戦術に出るつもりだと予想し、対抗手段を考えておかねばならなかった。
ただ沈黙するだけ、相手の仕掛けを奇貨として、ロシア国民向けに日本の主張を発信するといった果敢さが露ほどもない、というのでは外相の務めを果たせない。
不必要に口の軽い総裁外交特別補佐と不必要に閉じこもる外相。このコンビを見る限り、「交渉をいったん打ち切るべきだ」との声が与党内にも上がるのももっともだと言える。
トップ写真:日露首脳会談(2019年1月22日 モスクワ)出典:首相官邸facebook
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