英国新聞事情(下)~ロンドンで迎えた平成~その1
Japan In-depth / 2019年2月4日 18時0分
昭和天皇の戦争責任問題にも触れているが、案の定、なかなか辛辣であった。「2700年間絶えたことがないと日本人が自慢する、王家の134代目ヒロヒトは、一度は世界で最も憎まれた人物となった。第2次世界大戦終結後、戦争犯罪人として訴追される一歩手前のところで、連合軍司令官ダグラス・マッカーサー将軍によって、再出発のチャンスを与えられた」前回紹介した『サン』に至っては、「第2次大戦に従軍した元軍人達は、彼の死を祝った」とまで書いた。
▲写真 第二次世界大戦中のイギリスで編成された民兵組織「ホームガード」の兵士 出典:元Wikipedia; Duncanogi
他にも『インディペンデント』紙は、戦争責任問題に直接言及はしていなかったものの、有名な「終戦の詔勅」の英語訳を掲載した。さらには複数のメディアが、終戦直後に英国はじめノルウェーやオランダなどヨーロッパの王家が、占領軍総司令部(GHQ)に対して昭和天皇の助命嘆願を行った、と報じてもいる。
とどのつまり、昭和天皇には戦争責任があった、という点では、英国のジャーナリストの「歴史観」は、おおむね一致しているものと考えられる。
私自身も、戦争責任ありやなしや、という論点に限れば、それは間違いなくある、という考えだし、色々な場所でそう公言してきた。たしかに、大日本帝国憲法というものが、矛盾した理念の上に成り立っていて、一方ではありとあらゆる権限が天皇に集中していながら、他方では権限の行使には内閣の補弼が必要とされ、拒否権が明記されていない。つまり、天皇機関説の立場に立って、直接の責任は問えないとする主張も、理解できる。
とは言え、あの戦争に際して「開戦の詔勅」「終戦の詔勅」が、いずれも昭和天皇の名において出されたことはまぎれもない事実なのであり、こうした「立場に伴う責任」は免れ得ないと、私は考える。
ならば英国のメディアと同じではないのかと言われそうだが、それは違う。昭和が終わらんとするまさにその時に、戦争責任問題を書きたてるという姿勢には、まったく同調するつもりはない。
彼らが問題にしたのは、大戦中に東南アジアおよびインド亜大陸で、多くの英軍兵士が命を落としたり、捕虜となった者は虐待を受けた、という事なのだが、そもそもどうして英軍がアジアにいて、そこでなにをしていたのか、という視点がまったく欠落しているからである。ましてや『サン』のごとく、瀕死の病人を罵倒する行為は、ジャーナリストの資質以前に、人間としての品格にもとるのではないか。
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