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パフォーマンス理論 その4 指導者のタイプ

Japan In-depth / 2019年3月2日 12時7分



経験則とデータのバランス-データに基づく指導がいいと言われがちだが、競技の最前線ではN数が足りず、科学的にはなんとも言い切れない世界だらけだ。だから経験則重視の指導者の方が向いていることがある。ただこのタイプで思い込みが強い根拠を求めずなんでも信じてしまうので、かなりおかしな理論に傾倒してしまうことがある。データを信じる人間は非常に抑制的で外れることはないが、独創的なアイデアを試しにくくなる。批判的精神が強いので、どのようなアイデアもそうとは言い切れないという姿勢をとり、結局選手が迷い始めることがある。



良い指導者は一様に変化するし、選手も変化するということを信じている。学ぶということは自分も変わるということで、毎年少しずつ打ち出すメッセージが違ったりすればその指導者は変化していることになる。学ぶ指導者は変化し、変化する指導者は良い指導者になる確率が高いと思う。また、学ぶ指導者は質問が多く、選手に質問されることや疑問をぶつけられることを喜ぶ。これはある程度普遍的な良い指導者の資質と言っていいと思う。



さらに良い指導者は普遍性と個別化のバランスがいい。指導はどうあるべきかという基本的な信念を持ちながら、一方で個別に対応することとのバランスを取っている。片方だけでは信念がなくなるし、融通が効かなくなる。このバランスを取るためには、基本原理を獲得するためによく自問自答をしていて、かつ個別化のために選手をよく見ている。選手をあるがままに見るためには偏見を排除しなければならず、人に上下をつけたがる指導者は、その偏見によるバイアスから逃れられないので、長期的にはいい指導者にはならないだろう。



指導者には本当にたくさんのタイプがあり、誰にとってもいい指導者というのは難しく、自分に合う指導者を探す必要がある。日本のような流動性の低い状況ではマッチングミスが起きた時に解消することが難しいので、たくさんの才能が潰れている可能性がある。私はシステムとしてもっと自分に合うものを探せるよう流動性を高めるべきだと思っている。



繰り返しになるが指導者も一つの手段である。あくまで主体は選手にあり、選手が指導者を選択する側でもある。指導者の力も限定的でそこに期待をしすぎてはならない。問題を解決するのも、ヴィジョンを描くのも自分であり、自分の競技人生の手綱を手放した瞬間にそれは自分の競技人生ではなくなる。


 


(1、2、3。5に続く)


 


(この記事は2019年1月28日に為末大HPに掲載されたものです)


トップ画像出典:Photo by Air Force Medical Service




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