素人外交の怖さ 米朝首脳会談
Japan In-depth / 2019年3月6日 0時0分
宮家邦彦(立命館大学 客員教授・外交政策研究所代表)
「宮家邦彦の外交・安保カレンダー 2019 #10」
2019年3月4-10日
【まとめ】
・米朝首脳会談決裂は北朝鮮の米内政の認識が不十分だったから。
・米韓合同軍事演習規模の縮小で在韓米軍の抑止力は徐々に低下。
・米国内政は下院民主党とトランプ氏との死闘一色となる。
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先週第二回米朝首脳会談が、遂にと言うべきか、本来あるべき形でと言うべきか、やっぱり決裂した。先週の本コラムで「正直言って首脳会談にはあまり期待していない」とは書いたが、まさかここまで酷い結果になるとは思わなかった。最低の予想を更に下回る最悪の結果に終わったと言えるだろう。これだから素人外交は怖いのだ。
北朝鮮は「非核化」、すなわち北朝鮮が現在保有するものに加え、全ての核兵器・運搬手段を含む開発プログラムそのものを廃棄することについて譲歩することはないだろうと前回書いたが、この考えは今や確信となりつつある。一部本邦専門家は「金正恩は核廃棄を覚悟している」と言うが、それならこんな結果にはならないはずだ。
それにしても気の毒なのは北朝鮮外務省の女性次官・チェソンヒ(崔善姫)女史だ。彼女は数年前筆者が米国のアジア関係団体の訪朝団に紛れ込んで北朝鮮を訪問した際に会った覚えがある。会談決裂の後、異例の北朝鮮外相記者会見に同席していたが、その際の彼女はショックのためか、茫然自失で何か思い詰めたような表情だった。
次回の会合があるかどうかすら不明だが、彼女が責任を取らされる可能性は十分ある。今回の首脳会合決裂の最大の理由は北朝鮮の米国内政に関する認識が不十分だったからだ。トランプ外遊中に行われた下院公聴会でトランプ氏の元個人弁護士マイケル・コーエン氏が爆弾発言を連発し、大統領は政治的窮地に追い込まれた。
▲写真 マイケル・コーエン氏 出典:Flickr; IowaPolitics.com
トランプ氏にとっては、首脳会談の行方よりも、ワシントンでの彼自身の評判の方がはるかに重要だ。それにも拘らず、北朝鮮はサラミを薄く切り過ぎた(十分な譲歩をしなかった)。彼らはコーエン発言により生じたトランプ氏の窮地を過小評価し、従来通り強気でトランプ氏に経済制裁の大幅解除を求めたが、これは結果的に失敗だった。
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