米vs北朝鮮 勝者はどっち?
Japan In-depth / 2019年3月7日 18時0分
▲写真 米韓合同軍事演習(フォール・イーグル、2017年4月5日)出典:U.S. Department of Defence(米国防総省)HP
首脳会談の物別れのあと、3月1日未明にハノイで記者会見した北朝鮮の李容浩外相は、寧辺核施設廃棄について「朝米(米朝)両国の現在の信頼レベルから考えて、現段階で我々が踏み出す最も大きな歩幅の非核化措置だ」とした。さらに「国務委員長同志が今後、米朝交渉に対して意欲を失うのではないかという感じを受けた」と会談継続にも留保を示唆した。
金正恩氏は3月5日、「第2回朝米首脳会談とベトナム訪問を成功裏に終えた」(朝鮮中央放送)と何食わぬ顔で帰国し、平壌駅には朝鮮人民軍の儀仗隊と熱烈歓迎の大衆の歓呼が待っていた。もちろんすべてが動員され作られた歓迎と歓喜の声だが、この国はこれで70数年やってきている。
「米朝首脳会談は米国の拒否に合い失敗だったらしい」との風評が北朝鮮内に拡散しているが、支持率があるわけでもなく指導者同志の悪評で簡単に潰れる国ではないもの事実だ。制裁は続き、人民には「自立更生」が強いられる。一部には食糧不足から飢餓の発生を懸念する情報もあるが、他方では「米の値段は安定している」との情報もある。
■ 米朝は事実上の「核軍縮交渉」に入るしかない?
ハノイ会談で、北朝鮮の要求を認めず交渉の主導権を取ったのは確かにトランプ大統領だった。しかし、軍事圧力を放棄した兵糧攻めだけで、今後の金正恩体制を譲歩させられるかどうかはわからない。北朝鮮という独裁国家は朝鮮戦争以来、米国の敵視政策の下で事実上の制裁下にあった。必要とあれば数年間、ハリネズミのように内向きに外交を中止することもある。人民が飢えても見殺しにする。反乱の兆しがあればおびただしい人数の粛正を断行する。
現在、確かに国連安保理決議による制裁で北朝鮮貿易の輸出約9割を抑え金正恩政権の統治資金枯渇を狙って厳しい国際包囲網は効果を上げている。北朝鮮内では人民だけでなく官僚、軍、党機関の高級幹部に不満が広がっているものの、北朝鮮の金一族が作り上げた恐怖政治による統治システムは、やすやすとは潰れない。
金正恩氏が中国大陸を縦断するハノイ入りを支持した中国の習近平体制は、いまや北朝鮮カードをしっかり握っており、トランプ政権の向こう2年、あるいは第2期のトランプ政権を含む6年の間、極貧国の北朝鮮の影の擁護者になることも難しくはない。最終的には米中がカギを握ることになる。
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