パフォーマンス理論 その5 短所
Japan In-depth / 2019年3月10日 23時46分
時代によって流行り廃りがある。その時代の頂点にいる人間の動きはお手本とみなされやすく、もしその選手と自分のタイプが違えば、違いが短所として認識されてしまう。だが、実際にはそれはただの違いだ。カールルイスがトップの時には足を高く上げる動きが奨励されていて、足を低い位置ですり足のように走る動きは矯正されることが多かった。伊東選手、末續選手が出てきて、足を上げずに走る選手が頂点に立つと、足を上げ過ぎないようにという指導が出てきた。自信がない時にはただの違いが短所に見える。
実用的な話に戻る。とはいえ競技を開始して4,5年程度であれば明らかに改善するべき点があると思うので直しておいた方がいい。やはりそのスポーツをするのであればそれぞれに押さえておかないといけない基本的な動きというものもある。自分よりレベルが上の選手を見て、その選手たちが誰もやっていない癖であれば改善すべきものである可能性が高い。
反対に持ち合わせている選手がいるのであれば、ただの固有差である可能性が高い。発展している競技であれば教科書があるので、そこに書いてあるうちの3分の2程度には改善をした方がいいだろう。ただ、日本は型を重んじてさほど影響のない癖も改善する傾向にあるので、細部は意識しなくていいと思う。大雑把には胴体と胴体から20cm程度の距離までの手足の動きは教科書的に改善した方が有利なことが多い。
一方で腕や足などの末端は、違いがあってもただの癖なのでほっておいて構わないと思う。特に競技開始後間もない頃は派手に動く手足の動きに目を取られがちだが、そこは中心から生まれた動きの結果に過ぎないので、気を取られてはならない。
短所は癖付けによって直すしかない。熟達者でなければ頭で考えて変わることはない。なるべく因数分解し、問題となる部分だけを抜き出しコツコツ良い動きを繰り返す。私は走る時に少し前に着地して引っ掻く癖があったが、真下に着く動きを体得するために、横向きに片足だけ階段に乗せて自分を上下させる練習を繰り返した。家に戻ってからテレビを見ながら1,2時間やったり、アクセルを踏む時も階段を上がる時も真下をずっとイメージしていた。駅でゴルフのスイングをやっているおじさんが昔はいたが、あんな感じだった。
一方で、局所的に動きが改善されても、全体で統合されなければ意味がないので、癖を直す練習をした後は必ず実際の競技中の動きを行なっていた。局所的に改善した結果全体としてはバランスが悪くなるということが往往にしてある。いじってはなじませ、いじってはなじませることを繰り返すことが重要だ。
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