ペロシ、トランプ弾劾不賛成
Japan In-depth / 2019年3月14日 10時26分
規則では下院議員の過半数の賛成があれば、大統領の弾劾の手続きをとることができる。いまの下院は周知のように民主党が過半数を制する。だから民主党議員たちが弾劾手続きをスタートさせることは可能だし、弾劾で有罪との判決を下し、その判決を上院に送ることもできるわけだ。ただし上院でさらに大統領は有罪だと判定し、弾劾による解任を決めるためには100人の議員のうちの3分の2、つまり67人の賛成を必要とする。
この手続きの流れのスタート点で攻める側の民主党のリーダーであるペロシ議員が「弾劾はノー」という意向を明言したことの意味は大きい。下院での弾劾手続きはまず始まらないという見通しを印象づけたことになる。
ではなぜ下院の民主党最高指導者のペロシ議員が弾劾に背を向けたのか。本人は「国をあまりに割ってしまうから」と理由を説明した。その本音としては少なくとも二つの点が考えられる。
▲写真 トランプ大統領 出典:The White House flicr (Public domain)
第一には一般有権者の多くが大統領弾劾を好まないという事実である。
ペロシ発言と同時に発表されたアイオワ州の民主党支持の有権者の世論調査でこれからの国政において「弾劾を期待する」と答えた人が全体の22%、「医療保険の整備を期待する」が81%という結果が出た。
全米レベルの世論調査でも、大統領弾劾は望まないという意見がいつも多数派を占めてきた。だから昨年11月の中間選挙でも民主党側は「トランプ大統領弾劾」をまったく打ち出さなかった。アメリカ国民一般の心情として自分たちが自由な選挙で選んだばかりの大統領を議会に解任させるという概念に抵抗があるのだろう。
第二には弾劾決議が上院で可決される見通しはまずないという展望である。
上院で弾劾を成立させるには全議員の3分の2の賛成が必要であることはすでに書いた。いまの上院は与党の共和党が51議員、民主党が49議員という構成である。共和党はトランプ氏を大統領へ推した政党だから、その解任にはまず賛成はしない。67人の弾劾必要票にははるかに及ばないのである。
このへんの見通しは国政の場では自明とされている。民主党のビル・クリントン大統領が弾劾されかかったときは上下両院ともに野党の共和党が多数を占めていた。下院では弾劾決議は過半数で可決された。だが上院では否決されてしまった。まして2019年も2020年も上院は共和党が多数を占めるのだ。だから弾劾の可決の可能性はまずないのである。
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