異例な安倍長期政権のわけ
Japan In-depth / 2019年3月16日 16時36分
嶌信彦(ジャーナリスト)
「嶌信彦の鳥・虫・歴史の目」
【まとめ】
・だらだらと低成長で長く続く“アベノミクス景気”が長期安定政権の要因か。
・石破氏、岸田氏含め党内外に安倍政権を倒すエネルギーがほとんどみえない。
・政局は一見安定しているが、実際は国民の政治的関心が薄れているだけか。
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安倍政権が発足してから5年が過ぎた。歴代政権の中では、74ヵ月目に突入し、戦後二番目の長さだ。日本の政権はくるくる変わり、一つの政権が70ヵ月を越したのは極めて珍しく戦後では佐藤栄作首相の2798日に次いで2番目、異例の長期政権といえる。第一次安倍政権は体調不良で、わずか366日で身を引いているだけにこれほど長期になるとは驚きだ。
第二次安倍政権が誕生したのは、ひとえに菅義偉氏の巧みな根回しによるところが大きかった。菅氏が安倍氏を御輿として担ぎ、政権の座にいた民主党が落ち着いた安定的な政治を出来なかったため、再び安倍氏に出番が廻ってきたのだ。
▲写真 第2次安倍内閣発足の立役者 菅義偉官房長官 出典:菅義偉ホームページ
結果的には1993年に野党勢力だった細川護煕連立内閣、1年後の1994年に自民・社会・さきがけの自・社・さ 村山富一(社会)連立内閣が成立したが、結局長続きしなかった。自民党はその後、公明党と組んで再び1996年から橋本龍太郎、小渕恵三(1998年)、森喜朗(2000年)、小泉純一郎(2001年)、安倍晋三(2006年)などと自民党政権に逆戻りすることに成功していったのである。2009年から2012年まで民主党が政権をとるものの、第二次安倍政権になると公明党と組んで安定多数を確保し、アメリカのトランプ政権と親密さを演出することで外交的な安定感も得て長期政権の基盤作りに成功した。
▲写真 日米首脳会談(2017年9月22日) 出典:首相官邸 facebook
ただ景気拡大の期間は長かったがかつての「岩戸景気」「オリンピック景気」「列島改造景気」などの6-7%成長と比べると1%前後で景気拡大の実感に乏しいのも事実だ。
しかし、このだらだらと低成長で長く続いている“アベノミクス景気”が安倍政権を長持ちさせているともみえる。民主党政権の失敗はまだ記憶から消えていないし、自民党内にも5年間続いた安倍政権を倒すエネルギーがほとんどみえてこない。対抗馬とされる石破茂氏には国民を沸かす人気やエネルギーが感じられないし、宮澤派の岸田文雄氏も自ら立ち上がって政権を取りに行くガッツがみられない。そうそうしているうちに安倍氏は海外で顔を売り、すっかり日本の代表としての存在感をみせてきてしまった。拉致問題、北方領土交渉、対中国関係も遅々として進んでいないが、日本の中では誰がやってもそう変わらないだろうという諦念が当たり前のようになっているし、他の候補も野党もこれっ!といったアイデアも行動もみせないため、安倍氏でいいんじゃないかという雰囲気に落ち込んでしまっている状況のようである。誰かが「なるほどそんな手を打ってみたら面白い」と思うようなアイデア、行動が出てくれば、今の沈滞した政治状況は変わると思うが、どこにもアイデアや構想力、行動が出てきていない。
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