バブル時代の歩き方(下)~ロンドンで迎えた平成~その2
Japan In-depth / 2019年3月21日 13時58分
林信吾(作家・ジャーナリスト)
林信吾の「西方見聞録」
【まとめ】
・プラザ合意に端を発した資金の過剰流通。
・バブル景気同様、「失われた20年」もロンドンまで波及。
・バブル期が終わった今、企業名を見ても日本の会社か認識はされない。
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私は実は(と言うほど大げさなことでもないと思うが)、株を買ったことがない。したがって新聞の証券欄などは無用の長物だが、株価の動向がまったく気にならないと言えば、それも嘘になる。
なんだかんだ言っても、政権の支持率をはじめとする民心の動向は、景気と無関係ではあり得ないからだ。とは言え、ものには限度ということがある。日本がバブル景気に沸いていた当時、あるエコノミスト(元共産党員だったとか笑)が、「今時、株に投資しない人は、世捨て人と一緒」などと述べた。
私は、ひねくれ者であるとの自覚は持っているが、ジャーナリストとして社会に関わってきたとの自負も同時に抱いているので、世捨て人扱いは、はなはだ心外である。
もっとも、この御仁がバブル崩壊のせいで破産したとかいう話は聞かないから、案外、自分の財産を投機につぎ込むようなことは、していなかったのではないだろうか。だとすれば、それもそれで、言論人としていかがなものかと思うが。
バブルとはとどのつまり、投機マネーによって引き起こされた、株価や不動産価格の暴騰を背景とした「帳簿上の好景気」であったことは、前回述べた。
少しだけ付け加えさせていただくと、私見ながら、株価と不動産価格が同時に暴騰したと言われるが、お金をつぎ込んだ人の側から見れば、似て非なるものであったというケースも、かなり多かったのではないだろうか。
老後の資金を確保しようと、退職金を株につぎ込んだというような人も、中にはいたであろうが、そうした例も含めて基本的には「財テク」であり、当然そこにはリスクがある。
当時、そのうちNTT株が1000万円になる、などということが実際に言われていたが、本当にそんなことになったら、NTTの株価総額が、当時の西ドイツ国籍企業全部のそれに匹敵する、とまで言われた。
そんな話を鵜呑みにした人たちの方が、私に言わせれば「浮世離れ」していたのだが、その話はさておき。不動産価格の方はと言えば、当時はなにしろ、好景気で給料がどんどん上がっていたとは言え、住宅価格はそれをはるかに上回る勢いで高騰していた。とどのつまり、「無理をしてでも今買っておかなければ。一生マイホームに住めなくなる」と考えた人が少なからずいて、それが不動産マーケットを加熱させ、さらなる価格高騰をもたらす、という現象が起きていたのである。
そうした事情があったとは言え、「山手線の内側の不動産総額で、米国全土が買える」などと試算されるに至っては、それこそ『バブルへGO』という映画の中でヒロスエが連発していた台詞を真似るなら、「あり得なくね?」という話ではあるまいか。
もともと、政策的に引き起こされた円高のせいで(1985年の、世に言うプラザ合意)、輸出産業が打撃を受けたことから、思い切った金融緩和で内需拡大を目指したのが、バブルの発端である。銀行が低金利でカネをどんどん貸すものだから、カネ余り現象と言われるほど、資金の流通が過剰になり、それが投機市場に流れ込むこととなった。
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