イギリスにおける日本人学生 ~ロンドンで迎えた平成~その3
Japan In-depth / 2019年3月22日 23時0分
これでは本当に「英語が身についた」と言えるのかどうかさえ疑問に思えてしまう。留学の効用についてよく言われるのは、外国語を学びたいと思ったなら、その言葉の世界に飛び込んでしまうのが一番の早道だ、ということである。
英語に限った話ではなく、TVでも買い物でも、とにかく四六時中その国の言葉が耳に飛び込んでくる、という環境に身を置いたならば、まずは耳が慣れる。言葉というのは基本的に耳から得る情報なので、現地ならではの発音や言い回しを日常的に聞くことは、たしかに外国語上達の早道だ。これは私の経験から言っても間違いない。
ここで冒頭の話題に戻るが、英語を身につけるのに「駅前留学」がどの程度まで有効なのか、私はかねてから疑問に思っていた。講師は全員外国人、というのが売りであったが、生徒は全員日本人、しかも教室を一歩出れば日本語があふれている、という環境で身につくことなど限られよう。
しかし反面、英語漬けの環境に身を置きさえすれば、一生英語のことで困らなくなるだろうか。世の中それほど甘くはない。これまた実際に私の身近なところであった話だが、父親のロンドン赴任にともなって、現地の小学校に入学した子がいた。
▲写真 イギリスの小学校の授業の様子
出典)イギリス教育省(Department for Education)facebook
子供というのはさすがなもので、英国人の子供(実際には肌の色も国籍も様々だったが)に囲まれて暮らすうち、どんどん流暢な英語を話すようになったのである。ところが、家族ぐるみで帰国して半年ほどですっかり英語を忘れてしまったという。
これまた私自身も経験上よく理解できることで、ロンドンで10年暮らして身についた英語でも、しばらく使わないと「錆びつく」ものなのだ。
まして子供の場合、覚えるのも早ければ忘れるのも早い。が、それだけの問題ではなく、会話は慣れだけだが、やはり読み書きからきちんと勉強しないと本格的な外国語は身につかない。習うより慣れよ、と昔から言われるが、程度問題なのである。
それよりなにより、英語習得を志している人たちにちょっと考えていただきたいことがある。「貴方は、学んだ英語で一体なにを話すつもりなのですか?」これである。先ほど引き合いに出させていただいた、ロンドンの小学校に通ってたちまち英語を身につけたが、帰国してたちまち忘れてしまった子供というのは、実は私の従弟の同級生であった。
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