独のアジア人差別CMその後
Japan In-depth / 2019年4月17日 20時40分
いっけん解消されたかのように思えるこの問題ですが、削除の対象はあくまでも「ドイツ国内」であるため、オランダ、チェコ、ルーマニアなど他の欧州の国々でこの広告はまだ続いています。ホルンバッハ社の強気の姿勢は相変わらずで、現時点では特に他国で広告を削除する意図はないようです。
▲写真 Bornheimにあるホルンバッハ社の中央管理棟 出典:Wikimedia Commons; E.peiffer@gmx.net di Wikipedia in tedesco
■ CMであらわになった「差別」に関する温度差
それにしても、問題の動画がアップされてから削除されるまで、約一か月もかかっているところに、「温度差」を感じます。というのも、日本人を含む東洋人が例のCMを見ると、「不愉快」「差別的」との声が圧倒的に多いのですが、筆者がこのCMについてドイツ語で書かれているコメントをインターネットで見てみたところ、「面白いと思った」「笑った」「女性が性の対象ではなく主体的なのが良いと思った」「差別だというのは言いすぎ」「最近は何でもかんでも差別だとされてしまっている」など、同社のCMを肯定的に見る声が大多数だったのです。当事者との「温度差」に驚くばかりです。
そこには残念ながら「ドイツの現実」も見えてきます。ドイツの学校教育では差別問題を積極的に扱っており、またドイツは国としても人権意識が高い国である一方で、ドイツの世間は「アジア人」を「差別してはいけないマイノリティー」として必ずしも認識していません。過去にアジア人がドイツで迫害をされた過去がないということ、現在ドイツで生活しているアジア人の数が少ないということ、また当事者のアジア人の「ロビー活動が弱い」といったことが原因だと考えられます。
困ったことに、ドイツの社会には昔からどことなく「アジア人はバカにしてよいものだ」という空気が確かにあるのも事実なのです。東洋人が道ですれ違った人に、両目の端を手で横に引っ張る仕草で目の形をバカにされたり、「チンチャンチョン」と言われるなどといったことは枚挙に暇がありません。今回、Deutscher Werberat(独広告審議委員会)の指導が入るまで、このCMが約一か月間も流れていたのは、ドイツの社会にあるこういった「雰囲気」と無関係ではないでしょう。
■ CMの反対運動の発起人であるガン・ソンウン氏
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