独のアジア人差別CMその後
Japan In-depth / 2019年4月17日 20時40分
CMに反対する署名活動の発起人であるドイツ在住の研究者のガン・ソンウン氏はホルンバッハ社が当初広告の削除を拒否した際に#1000 Absagenというハッシュタグを立ち上げました。#1000 Absagenは日本語で「1000回のお断り」という意味ですが、同氏は「断られることは失敗ではありません。私たちは1000回断られるまで、抗議し続けます。」と発信しました。現在「ドイツ国内」の主要なメディアにおいて動画は削除されましたが、ガン・ソンウン氏は同社に対して、「ドイツだけではなく、他の国々やチャンネルも含めて全面的に問題の動画を削除すること」を求めており、多数の支持者を得ています。
■ 「ドルチェ&ガッバーナ騒動」との違い
今回のホルンバッハ社の騒動で思い出されるのは、ドルチェ&ガッバーナが中国人を差別的に描いた昨年の動画です。
動画でドルチェ&ガッバーナは「お箸文化」をバカにし、「LとRの発音」が苦手な東洋人をからかっていました。その後、SNS上でガッバーナ氏と思われる人物が中国人に対して侮辱発言をしたことにより、中国では大々的な不買運動に発展し大騒動となりました。結果的にドルチェ&ガッバーナは謝罪をしました。
▲写真 Dolce & Gabbana Bal Harbour 出典:Flickr; Phillip Pessar
ではなぜホルンバッハ社は抗議の声が多くあるにもかかわらず、謝罪をしないのか。それは、ドルチェ&ガッバーナの顧客の多くが「中国人」だったのに対し、今回のホルンバッハ社のターゲットはあくまでも欧州現地の「白人」がメインであることと無関係ではありません。
しかし、インターネットを通して世界中のCMを見ることが可能である今、自分の会社のメインである顧客層にだけ目を向けていればよい時代は終わりました。どこからでもアクセスできるわけですから、Deutscher Werberat(独広告審議委員会)からの指導がなくとも、本当の意味で多様性を大事にするという企業の「姿勢」が問われています。
ドイツで日本人を含むアジア人のロビー活動が今まで弱かったからこそ、今後の欧州での立ち居地を考えた時に、ガン・ソンウン氏の活動は有意義なものだと考えます。現にいま「なぜ、今回アジア人は、こんなに怒っているのだろう?」と考え始めている欧州人もいるわけです。「考え始めている」と書いたように、そのテンポがあまりに「ゆっくり」であることが悔しいところですが、なにせ差別をなくすための「第一歩」をようやく踏み出したばかりなのです。
トップ写真:ホルンバッハの店舗 出典:Wikimedia Commons; Gabriela Dinta
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