北を悩ますハノイのトラウマ
Japan In-depth / 2019年4月18日 19時0分
宮家邦彦(立命館大学 客員教授・外交政策研究所代表)
「宮家邦彦の外交・安保カレンダー 2019 #16」
2019年4月15-21日
【まとめ】
・北朝鮮は米朝合意を切望している。
・金委員長の発言から読み取れるハノイのトラウマ。
・米からも北朝鮮からも蔑ろにされる文大統領。
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先週北朝鮮で最高人民会議が開かれた。ラヂオプレスによると14日の朝鮮中央放送などは金正恩氏を「全ての朝鮮人民の最高代表者であり、共和国の最高領導者」と呼んだそうだ。日経新聞は「首脳外交を積極展開するため、名実ともに金正恩氏が『国家代表』の立場であることを明確にした可能性」を指摘するが、そうなのかなぁ!
それより気になるのは米朝首脳会談に関する金委員長の発言だ。「米国が正しい姿勢を持って私たちと共有できる方法論を見つけることを条件に」「米国が3回目の朝米首脳会談をしようというならば、もう一度は臨む用意がある」「今年末までは米国の勇断を待ってみる」といった発言は北朝鮮が対米合意を切望していることを暗示する。
同時に金委員長は「ハノイ方式は不可」とし、米国の交渉態度は「先に武装解除、後で制度転覆の野望」があり、「私たちの国家の根本利益に背馳する要求」だったとも述べた。「ハノイのような首脳会談が再現されることに対しては、歓迎しないし、臨む意欲もない」とも発言しているから、ハノイでのトラウマは決して小さくないようだ。
また、金委員長は「米国が今の計算法をやめて、新しい計算法を持って私たちに近寄ることが必要だ」とし、「3回目の首脳会談」を可能にする代案的経路としてシンガポールでの1回目の朝米首脳会談の結果である『6・12共同声明』の履行を提示。だが、流石のトランプ氏ももう騙されないだろう。北朝鮮の思惑通りに動くとは思えない。
▲写真 トランプ大統領 出典:Flickr; Gage Skidmore
このように、今回の最高人民会議での金委員長の言い方は実に「上から目線」の「高飛車」な発言ではあるが、その実態は「どうしても米国とは合意に達したい」という底意が行間から滲み出ていて、むしろ哀れにすら思う。勿論、一部の北朝鮮専門家はこれとは全く別の解釈をするかもしれないが・・・。
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