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福島の発展に必要な教育投資

Japan In-depth / 2019年4月19日 18時0分

かつて関西財界をリードしたパナソニックの時価総額は2兆3,407億円。このような新興企業の後塵を拝している。京都の企業を支えた人材は地元の大学教育が生み出した。この意義を実感しているからこそ、永守重信・日本電産社長・会長は18年3月に京都先端科学大学の理事長を引き受けたのだろう。2019年4月には学校法人名を永守学園、大学名を京都先端科学大に変更している。京都人は高等教育の有用性を知り抜いている。



▲写真 永守重信・日本電産社長・会長 出典:日本電産株式会社ホームページ


京都についで15-19才人口一人あたりの税金投入額が多いのは徳島だ。16年度に受け取った運営費交付金は125億円。上位陣には旧帝大、戦前からの大学、ナンバースクールの後継校が並ぶ。戦後生まれの大学の中では、信州大、東京医科歯科大、富山大についで4位だ。


徳島からも多くの人材や企業が産まれている。その筆頭が大塚ホールディングスだ。時価総額は約2.3兆円。かつて、「オロナミンCは小さな巨人です」というテレビCMで知られた徳島県鳴門市の飲料メーカーが、2006年に精神病治療薬エビリファイの開発をきっかけに世界的製薬メーカーに成長した。


携帯電話に用いる白色LEDの生産で有名な日亜化学は、1956年に小川信雄氏が徳島県阿南市で創業した。元社員の中村修二氏は青色ダイオードの発明が評価され、2014年にノーベル物理学賞を受賞した。



▲写真 高輝度青色発光ダイオードの発明でノーベル物理学賞を受賞した中村修二氏は徳島大学卒。 出典:Ladislav Markuš(Wikimedia Commons)


小川氏、中村氏ともに地元の徳島大学卒(小川氏は前身の徳島高等工業学校)。2000年代、中村氏と日亜化学は訴訟合戦となるが、ノーベル賞受賞のインタビューで小川氏に対しては、「日亜化学の先代社長の小川信雄氏には感謝している。彼の研究支援がなかったらこのノーベル賞はなかった」とコメントしている。


徳島は大物政治家も多い。三木武夫氏、後藤田正晴氏、仙谷由人氏らだ。幸福の科学の創始者である大川隆法氏も、徳島城南高校から東京大学に進学したエリートだ。さらに、高校野球界に革命をもたらした池田高校もある。わずか人口1万5,000人の町の公立高校が日本一を目指したというのだから、常軌を逸している。徳島は人材の宝庫だ。


グローバル化、情報化が進み、世界は急速に変わりつつある。生き残るには高度な知的人材を育成しなければならない。彼らが新たな産業を作り上げる。京都や徳島が生き残ったのは、知的人材の層が厚かったからだ。それを支えたのは、京都や徳島の大学のレベルが高かったからだ。地元の名門大学を目指し、高校や中学のレベルも上がった。この中からは故郷以外の大学に進学する若者も出てくる。その中には成功し、故郷に還元する人たちもいる。


地域力は人材力だ。人材育成には教育が重要だ。戊辰戦争に敗れた福島県には、国立大学医学部が存在しない。また、東北地方は三陸から常磐沖の好漁場を有するのに、岩手大学に農学部食料生産環境学科があるだけで、「水産学部」は存在しない。九州では鹿児島大学と長崎大学に存在するのと対照的だ。これは戊辰戦争の戦後処理が影響しているのだろう。


教育レベルの向上は一朝一夕ではならない。福島第一原発事故で、福島は甚大な被害を蒙った。この地を復興させるには、公共事業だけでなく、長期的な視点に立った教育が必要だ。今回の福島大の試み、是非、応援したい。


トップ写真:2019年4月、福島大学に農学群食農学類が開設される 出典:国立大学法人 福島大学ホームページ


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