金正恩体制、終わりの始まり
Japan In-depth / 2019年4月20日 11時4分
第2に、一気に勝利しようとして「制裁の解除」という自分の最も欲するカード(弱点)を見せてしまったことである。
最高人民会議での演説で金正恩は「いまこの場で考えてみると、いわゆる制裁の解除問題のために躍起となって、米国との首脳会談にこだわる必要はないと考えるようになった」と吐露した。この発言は、ハノイ米朝会談を振り返る過程で「制裁解除に執着心を見せたばかりに米国に弱点を知られてしまった」との意味に解釈される。
これで黎明通りなどの平壌リニュアールで「制裁は効いていない」とするプロパガンダが水泡に帰した。一方、米国は「制裁が効いている」との自信を深め、制裁と軍事的圧力を組み合わせれば金正恩を「落とせる」との自信を深めたと思われる。ハノイ会談後、3月以降の米国の動きはそれを物語っている。
第3に、何らの成果も手にしていないにも関わらず、トランプとの良好な関係を維持しようとして「核実験とミサイル発射はしない」と約束したことだ。
これでトランプに圧力をかける手段を自ら縛ってしまった。この約束を破ればトランプのメンツをつぶすことになるばかりか、それを口実にトランプが「軍事オプシション」に進むことも正当化できる。金正恩は自らカード選択の幅を狭めてしまった。
第4に、あまりにも大勢の主要幹部を帯同(金正恩を除く政治局員18名中5名)したため、自身の失敗を隠蔽しにくくしたことである。
朝鮮中央通信によるとハノイ会談の主要幹部随行者は、政治局委員の金英哲、李洙墉、金平海、呉秀容の各党副委員長と李容浩外相、政治局委員候補の努光鉄人民武力相と金與正党第1副部長だったが、組織指導部副部長の趙甬元(チョ・ヨンウォン)や崔善姫外務次官などをはじめとした中央委員会メンバーも多数随行した。
これで金正恩は自身の外交的失敗過程を部下たちにすべて見せてしまった。口に出さないが多くの幹部たちは心の中で金正恩の未熟さを感じているはずだ。
▲写真 金英哲政治局委員。ハノイの米朝首脳会談を同行した多くの北朝鮮幹部が目の当たりにした。 出典:Public domain
■ 金正恩の焦りがさらなる失敗もたらす
金正恩は、自身の弱点糊塗とハノイ会談失敗の収拾策を打ち出すまでに43日もかかった。いかに打撃が大きかったかが推しはかられる。しかし守勢から抜け出せる妙策はいまだに見いだせていない。やっと見つけた打開策は「自力更生」という使い古された耐乏強要政策だった。
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