英国料理が美味しくないわけ
Japan In-depth / 2019年4月20日 18時0分
ところが19世紀に入り、英国社会に大きな変化が訪れる。言わずと知れた産業革命だが、これが英国の都市部における食生活にも大いなる変化をもたらした。
多数の工場労働者に、重労働にも耐え得るだけの栄養を、手っ取り早く採らせねばということで、朝食にはベーコンエッグ、昼食にはフィッシュ・アンド・チップス、というのが英国料理のスタンダードになったのである。夜はと言えば、チーズなどを少しつまみながらぬるいビールで腹を満たすというもので、これは昔からそうであった。
▲写真 イギリスの代表的な朝食ベーコンエッグ(イメージ)出典:pxhere
日本ではディナーと言えば夕食のことと思われているが、もともとは昼食がディナーすなわち一日のメインの食事で、夜は軽食=サパーと呼んだ。英語の授業などで習った方も多いのではあるまいか。
それはさておき、質より量だと言わんばかりの「食文化」は、決して英国の伝統と呼び得るものではなく、産業革命の副産物、それも権力側の都合で定着させられたものだったのである。
この知識を得てから、私は英国料理を悪しざまに言うことに、ますます躊躇しなくなった。労働者を機械の部品と同様にしか考えないのと同根の思想によって定着した食べ物など、それこそ「人類の食い物として認めたくない」と言って、なにが悪いか。
トップ写真:イギリスの家庭料理ミートローフ(イメージ)出典:pixabay; congerdesign
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