離脱論と「孤立主義の伝統」 EUと英国の「協議離婚」1
Japan In-depth / 2019年5月5日 18時0分
林信吾(作家・ジャーナリスト)
林信吾の「西方見聞録」
【まとめ】
・EU離脱期限の10月までメイ首相は持ちこたえるか?
・EU離脱に見る英国の孤立主義の伝統。
・EUにも「民主主義の赤字」と表現されるほどの問題はある。
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2016年、英国においてEU(欧州連合)からの離脱の是非を問う国民投票が実施されたが、私は、「かなりの僅差ではあろうが、最後は残留派が勝つだろう」と予測した。
結果はご案内の通りで、大恥をかいてしまったわけだが、ここへ来て、もしかすると私の予測が「周回遅れで正解」ということになるかも知れない。そんな情勢になってきた。
すでに大きく報道されているが、本来の離脱期限は3月29日であったが、離脱条件について議会の承認がどうしても得られず、まずは4月12日まで、次いで10月末までと、期限の延長が繰り返されている。
この間に欧州議会選挙があるので、英国はこのままでは、選挙への参加すなわち「加盟国の義務」を果たし続けねばならず、かと言って選挙前に各党が納得できる離脱案を政府が示し、EUがそれを受け容れる見込みはない。そもそも10月までメイ首相がその地位に留まれるだろうと考えている人は、今の英国ではごく少数になってしまっている。
▲写真 メイ首相 出典:Flickr; EU2017EE Estonian Presidency
問題は、これほどの混乱が生じることを、本当に予測できていなかったのか、ということと、そもそもどうして英国ではEUから離脱したがる人が多いのか、ということである。前段については、「遺憾ながら答えはイエスである」ということになる。
言い訳になるかも知れないが、2016年の時点で、時のキャメロン首相はじめ英国の政治かでさえ、国民投票で離脱派が勝つと思っていた人などほとんどいなかったことは事実である。
これは、強行離脱派と呼ばれる政治家たちが、具体的な離脱手続きについてプランもヴィジョンも示せなかったこと、そのため、キャメロン辞任を受けて行われた保守党党首選挙の際、相次いで「敵前逃亡」してしまったことで証明されよう。この問題は、次回もう少し詳しく見る。
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