見下げ果てた英国の政治家達 EUと英国の「協議離婚」2
Japan In-depth / 2019年5月6日 7時0分
▲写真 デヴィッド・キャメロン元首相 出典:Flickr; The Department for International Development(DFID)
彼自身、EUに不満はあっても単一市場から抜ける考えはなく、多くの国民も同じ思いだろうと信じていた。つまり、国民投票では、かなりの僅差でも残留派が勝つと信じたのである。各種の世論調査でも、一様にそうした結果が出ていた。
その前提で考えれば、たしかにこれは有効な手段であった。まず、保守党内で存在感を増している離脱派を抑え込める。世論がこうなのだ、と言われれば、彼らも静かにならざるを得まい。
一方、離脱を求める声もかなり強いと、強硬策をちらつかせつつEUと交渉すれば、単一市場にとどまりつつ移民を制限することを認めさせることも可能になるであろう。さらに、長年にわたって保守党が一本化できなかった対EU政策に決着をつければ、自分も政治家として歴史に名を残せる。
……いや、もちろん他人の心の中であるから、これは私の推測であることを明記しておくが、この推測と矛盾する事実は、今のところひとつも見当たらない。
ところが、これは完全な読み違いであった。僅差で勝利を手にしたのは、離脱派だったのである。キャメロンは自分の過ちを認めて辞任。そうなると、離脱派の大立者であった、元ロンドン市長のボリス・ジョンソンが後継者として有力視されることとなったが、彼は早々に、EUからではなく保守党総裁選挙から離脱する。理由は簡単で、彼自身、本当に国民投票で離脱派が勝つとは思っていなかったのだ。
▲写真 ボリス・ジョンソン庶民院議員、外務・英連邦大臣2017年9月 出典:EU2017EE Estonian Presid
そもそも彼ら離脱派は、「EUから離脱することで国家の主権を取り戻せるし、移民も制限できる。また分担金も払わずに済むので、財政面でも寄与する」などと、おいしい話ばかり並べていたが、これが実現不可能な空手形でったことが、ほどなく明らかとなった。
結局、火中の栗を拾うこととなったのが、現首相テレーザ・メイで、もともとキャメロン前首相の側近であった彼女ならば、なんとか英国に有利な条件で「軟着陸」させることが可能ではないか、との期待を集め、新首相に選ばれたのである。マーガレット・サッチャーに次ぐ、英国憲政史上二人目の女性首相が誕生したわけだが、残念ながら彼女にはサッチャーほどの突破力はなかった。
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