日米自動車問題の偽ニュース
Japan In-depth / 2019年5月20日 11時6分
古森義久(ジャーナリスト・麗澤大学特別教授)
「古森義久の内外透視 」
【まとめ】
・かつての管理貿易再開を思わせるフェイクニュースが流れた。
・日米両政府は対米輸出制限を否定。
・否定後もフェイクを重ねる朝日新聞。
【注:この記事には複数の写真が含まれています。サイトによっては全て表示されないことがあります。その場合はJapan In-depthのサイトhttps://japan-indepth.jp/?p=45834でお読み下さい。】
「アメリカのトランプ政権が日本車の対米輸出に数量制限をする」という報道が日本の主要メディアで5月中旬、流された。だがそんな事実はなかった。フェイクニュ―ス(偽ニュース)だった。日本の各主要新聞では朝日新聞の誤報ぶりが最も顕著だった。
朝日新聞は5月17日付朝刊の第3面に「日本車 対米輸出制限の恐れ」という大きな4段見出しの記事を掲載した。記事全体をまとめた前文は以下のような書き出しだった。
「日米貿易交渉で、日本車の対米輸出制限が浮上する可能性が出てきた。トランプ米政権が日本と欧州連合(EU)に対し、輸入車への高関税を先送りする代わりに、半年以内に輸出制限への同意を求める方針だと米通信社が報じた。輸出台数の規制には受け入れられないとクギを刺してきた日本政府に困惑が広がる」
▲写真 朝日新聞本社 出典:Wikimedia Commons; PRiMENON
この朝日新聞の記事はトランプ大統領が週内、つまりほんの数日以内にも署名するとみられる大統領令の中で日本に対する対米自動車輸出の数量制限を求める見通しだ、というのだった。本文ではより具体的に以下のように書いていた。
「米ブルームバーグ通信の15日の報道によると、トランプ大統領が署名する大統領令は対米輸出台数に上限を設けるなどの輸出制限について180以内に日本やEUと合意するよう関係機関に指示する内容だとしている」
▲写真 Bloomberg Tower 出典:Flickr; Eden, Janine and Jim
日本にとって自動車の対米輸出の数量制限というのは悪夢の再現となる。1980年代の激しい日米貿易摩擦では日本はアメリカの政府や議会の激烈な圧力と威嚇でアメリカに向け輸出する日本車の台数を無理やりに「自主規制」させられた。年間何台以上はアメリカに輸出してはいけないという管理貿易だった。
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