トランプ訪日、中朝韓の蹉跌
Japan In-depth / 2019年5月31日 17時55分
いうまでもなくアメリカは日本にとっての唯一の同盟国である。国と国の関係、国民と国民のつながりも特別な歴史や重み、深さがある。だから日本が今回、招いたのはドナルド・トランプという人物ではなく、あくまでもアメリカ合衆国の元首なのだと解釈してもよい。相手はアメリカ国民が民主的な選挙によって選んだ代表なのである。その代表を日本の国家と国民とが招いたわけだ。
たとえトランプ氏という個人の政治指導者にいろいろ問題があったとしても、トランプ大統領が今回の訪日では天皇皇后ご夫妻と通訳なしに、なごやかに語りあう様子や、北朝鮮による拉致被害者の家族と面談し、励ましの言葉を送り続ける光景は、一般の日本国民には文句なしの人間レベルでの温かさを感じさせただろう。
トランプ大統領が安倍晋三首相とともに海上自衛隊の護衛艦を訪れ、日米両方の部隊に直接の感謝や激励の言葉を贈る情景も、「日米同盟はかつてないほど堅固」という安倍政権側の評価に重みを与えていた。
日本の野党側は日米間の貿易問題を提起して、両国間にはまだ対立があるのだという構図を強調する。だがいまのアメリカにとって日本との貿易問題は中国との対決にくらべれば、まったく重大性や緊急性が少ないのだ。だからこそトランプ大統領もその解決を8月以降にしようと、ごく簡単に日本側の期待に沿ったのだといえよう。
▲写真 事実上の空母化が決まっている海自最大の護衛艦「かが」に乗艦し、日米隊員を激励、日米同盟の強固さを内外に示した両首脳(2019年5月28日 護衛艦「かが」甲板上)
出典:首相官邸facebook
さてこのトランプ大統領の来日の成否を判断するうえで、興味ある指針は中国の反応である。中国官営メディアからは「形だけで中身はない」とか「日米蜜月というのは安倍首相の幻想だ」などという批判が伝わってくる。
だが日米中という三国の戦略的な構図からみると、中国が日米の交流をけなせばけなすほど、日本にとっての実益が大きいことの証明になるという皮肉な現実が存在する。中国は日本の尖閣諸島への軍事がらみの攻勢を強めている。日本領土の軍事的奪取がその究極の目的であることは、最近の日本側海域への武装艦艇の継続的な侵入をみてもわかる。
そんな際に尖閣諸島の防衛を公然と誓っているアメリカのトランプ大統領が日米共同防衛のきずなを安倍首相と日本の自衛隊の護衛艦上に並んで立ち、確認しあうというのは、中国にとって最も忌避すべき事態だろう。
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