宗教改革と「海賊国家」 悲劇の島アイルランド その2
Japan In-depth / 2019年6月1日 18時22分
アイルランド北部のアルスター地方に、主にスコットランドから多数の移民が送り込まれたのだ。前回述べた通り、アイルランドとスコットランドの住民はともに「島のケルト」すなわち民族的に同根で、文化的な結びつきも強かった。しかし、この時期にスコットランドから渡ってきた人々は、古来のゲール語をすっかり忘れて英語を母国語とし、プロテスタントの信仰を持つようになっていた。
さらには、彼らの言う「植民」とは、もともとアルスターで暮らしていたカトリックの住民を特定の居住区に押し込め、奪った土地に自分たちの生活圏を築く、というものであった。言い換えればカトリックの住民の立場は、新大陸における先住民、あるいはアフリカにおける黒人と同様のものとなったのである。
その後300年を経て、具体的には20世紀末の統計ということになるのだが、このアルスター地方においては、金融資本の100%、製造業の70%以上、サービス業の過半数がプロテスタントのもので、カトリックは下層労働者階級と同義語であった。
とどのつまり、スペインにおいてもアイルランドにおいても、イングランドは信仰と経済活動の両面から敵視され、恨みを買うに至ったのである。
繰り返し述べるが、イングランドにしてみれば、強大なカトリック勢力の脅威に対抗するため、という大義名分があったわけだが、いつの時代、どこの国でも、もっとも立場の弱い者が最大の被害者になるという構図だけは変わることがない。
しかしその構図も、永遠に変わらないというものではなかった。
追い詰められた弱者が武器を手にした時、歴史はまたも大きく動き、そしてさらなる悲劇が招かれるのである。
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