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離脱で浮上、国境問題リスク メイ首相辞任後の英国の運命(下)

Japan In-depth / 2019年6月11日 11時50分

しかしながら独立の機運はその後も繰り返し盛り上がりを見せ、近代に入っても、独立を目指すスコットランド国民党は(議会内勢力としては、労働党と歩調を合わせることが多いが)多数の下院議員を当選させ、地方選挙では連戦連勝を誇っている。


2005年には、ついに独立の是非を問う住民投票が実施されたが、反対票が55パーセントを占め、ひとまず英国の一部にとどまることが決まった。しかし今次のブレグジットをめぐる政治的混乱を受け、国民党は、「もしもEU離脱が現実のものとなるのであれば、独立してスコットランド一国がEUにとどまるという政策の是非を問うべく、再度の住民投票を実施する」と宣言している。スコットランド議会において、国民党は今も最大勢力なので、保守党などが再度の住民投票を阻めるとは考えにくい。



▲写真 メイ英首相とスコットランドのニコラ・スタージョン首相の会談(2016年7月15日)出典:Wikimedia Commons; First Minister of Scotland


また、目下連載中の「悲劇の島アイルランド」で今後詳しく見て行くことになるが、あの島もかつて英国に占領され、独立を回復した後も、北部のアルスター地方だけは英国の一部としてとどまることとなった。これは、かの地で支配的な地位を占めていた、スコットランド系プロテスタントの住民の意思を汲んだものであるが、そのプロテスタント諸派も、ブレグジットには否定的だ。


具体的には、プロテスタント諸派の中でもっとも保守的であるとされ、保守党政権に閣外協力していた民主統一党でさえ、メイ首相が示した離脱案(事実上EUとの妥協案)に対しては、ことごとく反対票を投じたし、最近では、「ブレグジットによってアイルランドの労働者・農民の生活が脅かされるのを座視するくらいなら、カトリック諸派と和解してアイルランド統一を模索するのも選択肢」と言い出す人もいるほどだ。


そもそも、激しい反英テロを繰り返していたIRA(アイルランド共和軍)などカトリック過激派が、1990年代に入って急に和平交渉に応じたのは、英国政府の努力もあったが、基本的には冷戦終結からヨーロッパ統合という流れがあったからこそである。


別の言い方をすれば、EUという国境なき国家連合にともに加わることで、暴力に訴えてでもアイルランドを統一するという大義名分が失われていったわけだが、英国が強引にEUから離脱するとなると、話はまったく違ってくる。


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