離脱で浮上、国境問題リスク メイ首相辞任後の英国の運命(下)
Japan In-depth / 2019年6月11日 11時50分
彼らカトリックの過激派からは、現在のような、北アイルランドとアイルランド共和国との間での自由な往来が許されなくなった場合は、「反英武装闘争の再開も辞さない」との声まで聞かれる。
▲写真 北アイルランドのロンドン・デリーで起きた自動車爆弾によるとみられる爆発。アイルランド共和軍(IRA)の犯行との見方も(2019年1月19日)出典:flickr; Tiocfaidh ár lá 1916
メイ首相が合意なき離脱に踏み切れなかった最大の理由は、この国境問題を解決する妙案が見いだせなかったからであるし、英国が直面する本当のリスクとは、経済問題よりも国境問題ではないかと私が心配する理由は、お分かりいただけたことと思う。
もちろん、住民投票の結果はなかなか予測しがたいが、ひとつの可能性としては、大ブリテン島においては300年以上忘れ去られていた国境が復活し、アイルランドにおいては、北部が連合王国から離脱してしまうということも考えられる。しかもその可能性は決して低くはない。
たしかに、合意なき離脱による経済的混乱は、大きな問題だ。日本のホンダや米国のフォードなど自動車メーカーは、早々と生産拠点を英国外に移す構想を発表しているし、英国企業でも、掃除機など家電メーカーとして最近は日本でも有名になっているダイソンが、シンガポールへの本社移転の構想を発表した。ダイソンの経営陣は、英国財界には珍しく離脱を支持していたと聞くが、ようやく事の重大さに気づいたのだろうか。
地球の裏側にあり、なおかつEUと密接な関係にある日本のビジネスマンたちが、もっぱら経済的な側面からのみ、今次の騒動の行く末を案じるのは、当然のことである。しかしながら、この問題の本質とは「国家のあり方」が問われているのだということを、今一度考えてみるべきではないだろうか。
国境なき国家連合を実現させ、さらなる政治統合を志向するEUに対して、国民国家の立場を守り抜こうとする英国という図式は、日本とアジアの将来を考える上でも、大いに参考になると私は考える。
トップ写真:イギリス国旗と欧州旗 出典:英・欧州連合離脱省公式ウェブサイト
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