伝説の労働運動活動家半生記
Japan In-depth / 2019年6月11日 18時0分
古森義久(ジャーナリスト・麗澤大学特別教授)
「古森義久の内外透視 」
【まとめ】
・松崎明氏はマスコミからも恐れられる労働運動活動家。
・当時、警察も横領容疑で書類送検するも不起訴処分。
・複雑な活動家・松崎氏の半生が描かれた本が出版された。
松崎明氏といえば、知る人ぞ知る、日本の戦後の労働運動でも異端の名をとどろかせた活動家だった。日本の大手マスコミからも恐れられた人物でもあった。松崎氏の活動を一般に詳しく知らせることはマスコミ界のタブーでもあったのだ。だが彼の死から8年余、松崎氏の一生を詳細に描く大著がこの春、出版され、話題を呼んでいる。
2010年(平成22年)12月9日、74歳で病死した松崎明氏は現役時代は激烈な労働運動に一貫して生きてきた。正式な肩書きは国鉄の動労(動力車労働組合)委員長、JR東労組委員長、革マル(日本革命的共産主義者同盟革命的マルクス主義派)副議長などだった。
松崎氏はカリスマと大胆な行動力とで労働運動だけでなく、革命運動的な政治活動にもかかわり、その傘下にあった動労は「鬼の動労」と各方面から恐れられたこともあった。松崎氏が指導的な役割を果たした革マル派は同種の革命的な活動で知られた中核派と激しく敵対し、暴力事件を引き起こしたことも広く知られていた。
警視庁は2007年11月、松崎氏をJR総連の内部組織「国際交流推進委員会」の基金口座から3000万円を引き出し横領した業務上横領容疑で書類送検した。直後に松崎氏はハワイの高級住宅街にある別荘を3千数百万円で購入していた。この購入資金は同協会職員の個人口座を通じてハワイの不動産会社に送金されていた。だが東京地検はこの件を嫌疑不十分で不起訴処分にしたという事件も当時、大きな波紋を広げた。
松崎氏についてはその闇の部分を平成時代の主要マスコミが報じることをためらったため、「平成のマスコミの大タブー」ともされてきた。このためらいは当時、批判的な松崎報道を試みたマスコミに対して激しい威嚇の行動がかけられたためだとされていた。
ところがその松崎明氏の生い立ちから活動、光と闇を詳細かつ多角的に描いたノンフィクションの大作がこの4月末に出版された。同書のタイトルは『暴君 新左翼・松崎明に支配されたJR秘史』(小学館刊)、著者はすでに何冊もの長大ノンフィクション書を世に出している牧久(まき・ひさし)氏である。
この書『暴君』自体の帯の広告文を紹介しよう。松崎明という人物のいくつもの顔が浮かびあがる。なにしろ500ページに近い大作なのである。
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