財政検証、参院選後に先送り
Japan In-depth / 2019年6月26日 19時38分
八木澤徹(日刊工業新聞 編集委員兼論説委員)
【まとめ】
・厚生労働省「財政検証」の公表を参院選のため延期。
・安倍政権下で実質賃金・全要素生産性(TFP)は予想を下回った。
・将来の年金給付水準の議論から目を背けるべきではない。
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政府は5年に1度、公的年金の将来見通しを確認する、厚生労働省「財政検証」の公表を7月の参院選後に先送りする。前回は6月に公表されており今回も同時期に公表されるとみられていたが、政府・与党は参院選への影響を避けるため公表を遅らす。
公的年金問題については、「公的年金だけでは老後資金が2000万円不足する」とした金融庁報告書に野党の批判が集中。財政検証でも将来の給付水準の目減りが見込まれている。
財政検証は2004年の年金制度改革で義務づけられた。5年に1度におおむね100年間の公的年金の健全性をチェックするほか、「男性の現役世代」の平均手取り収入に対する「夫婦二人世帯」の厚生年金の給付水準である「所得代替率」を示す。
国民民主党、立憲民主党など野党は参院選までの公表を求めていた。厚労省は「検証が終わり次第、結果を公表する」としていたが、6月26日までの国会会期中に示さなかった。
現在の代替率は62.7%。安倍晋三首相は19日の党首討論で「将来の所得代替率5割を確保していく」と述べた。前回の検証でも43年度は50.6%に低下するといった8パターンが示されている。ただ、最悪の試算では36年には代替率が50%まで低下し、年金額は4万円も減る。
このケースでの実質賃金の伸び率は0.7%の伸びを前提に想定されている。しかし、安倍政権の6年間での実質賃金は逆に0.6%のマイナスだった。
▲写真 安倍首相 出典:首相官邸Twitter
また、生産性向上などを示す全要素生産性(TFP)は0.5と予想していたが17年の実績値は0.3。今回の検証ではさらに厳しい経済前提が予想されるほか、厚生年金の対象を拡大したケースや、働いて一定の収入がある60歳以上の年金を減額する「在職老齢年金制度」の縮小・廃止した場合の影響も検証する。
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