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習近平訪朝で北の非核化暗雲

Japan In-depth / 2019年6月28日 18時0分


▲写真 第2回米朝首脳会談(ハノイ) 出典:Dan Scavino Jr. @Scavino45


この問題を一気に解決するには、中国からの政治・軍事的支援と経済的支援を受ける方法しかなかった。金正恩は習近平主席を訪朝させ、米朝非核化交渉に中国を積極的に介入させる方針に大転換したのである。これで金正恩の対中「自主路線」はあえなく終焉を迎えることになった。


おりしも習近平体制は、台湾からの攻勢や香港住民の強力な民主化闘争を前にして苦境に陥っていただけでなく、貿易戦争で米国の圧力を受け続けていた。新たな「カード」がどうしても必要となっていた。北朝鮮の「核カード」を利用せざるを得なくなったのだ。中朝の利害は久しぶりに一致した。金正恩体制への支持を習近平政権がこれほど大々的に内外に誇示したのは初めてだ。


 


■ 習近平に対する金正恩の献身ぶり


習近平の平壌滞在期間、金正恩は就寝時間を除いてほぼ密着同行し、6月20日夕方の集団体操観覧後は、習近平より宿泊施設に先に到着して習夫婦を迎えた。この献身ぶりと引き換えに、習近平主席も金正恩に大きなお返しを行いその権威を引きたてた。


習近平は自分に対する平壌市の歓迎行事を金日成と金正日の遺体が安置されている錦繍山太陽宮殿で行えるように承認したのである。これまで北朝鮮と中国の間では数多く高位級代表団の交流があったが、中国の指導者が錦繍山太陽宮殿を訪問し、敬意を表したことはなかった。



▲写真 錦繍山太陽宮殿 出典:Flickr; Mark Scott Johnson


また今回金正恩は、習近平に媚びるために、これまでのタブーを破り、新たに建設した施設を「迎賓館」と命名した。元駐英北朝鮮公使の太永浩氏は次のようにその驚きを語った。


「私は、今回、北朝鮮が新たに建設した招待所を迎賓館と呼んだのを見て驚きました。金日成や金正日時代には事大主義に反対するとして中国や旧ソ連(ロシア)で使用される表現を絶対に使用できないようにしてきましたが、金正恩は今回、習近平の耳障りを良くするために、過去タブーとされていた「迎賓館」という単語を招待所につけました」。


 


■ 困難さ増した米朝非核化交渉、注目されるG20


中国が北朝鮮を積極的に支援し米朝非核化交渉に積極介入してきたことで、今後の米朝非核化交渉は困難が予想される。米朝交渉に中国の利害を絡めてくるからだ。特に長期化が予測される米中貿易交渉が絡むことで複雑化するのは目に見える。


北朝鮮はいま、核廃棄のために先行させなければならない核リストの申告と非核化ロードマップ、非核化の方法などについての議論を後回しにして、ハノイ会談でトランプ大統領が提起した寧辺以外の隠された核物質生産設備を追加提示することで制裁を段階的に解除させようとしている。


G20サミットで習近平主席は、トランプ大統領と文在寅大統領などに北朝鮮のこの案を提示し、寧辺核施設廃棄プラスアルファで対北朝鮮制裁解除を働きかけると思われる。しかし、米国が北朝鮮の核ミサイルをそのままにして、核施設のいくつかを廃棄したからといって制裁を解くようには見えない。


G20でトランプ大統領が習近平主席をコントロールできるのか、もしくは北朝鮮カードを手にした習近平が逆襲に転じるのか、G20サミットは米朝交渉の行方を決める一つの山場となることは間違いない。


トップ写真:北朝鮮マスゲームの様子 出典:Flickr; (stephan)


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