パフォーマンス理論 その8 イメージトレーニング
Japan In-depth / 2019年7月3日 7時0分
人類がイメージを共有して伸びるということも起きる。これはこれで一つのテーマになり得るぐらい興味深い。1964年の体操を見てみると驚くほど技術がシンプルだ。現在ではとてつもなく複雑な試技を選手が行うようになっているが、誰か一人だけができるようになっているのではなく、多くの人が拮抗して競い合っている。人間は誰かが実際に成し遂げたことを目にすると、卓越者にとっては自分のことように具体的にイメージすることができ、一定の人間が実際に体現することができるようになる。ここ30年の日本のサッカーのレベル向上は著しいが、私はテレビでJリーグ、および海外のプレイをみることができるようになったのが少なからず影響しているように思う。
私のイメージトレーニングは中学生ぐらいから始まった。その当時はイメージトレーニングと呼ぶことすら知らなかった。練習前に颯爽と走り抜ける自分をイメージしてから走り出すことをなんとなく始めた。また試合前に、試合でどんな感じで走るかをイメージしておいて試合に出るようになった。陸上競技はリハーサルの繰り返しで、つまり頭の中で一度行ったことを身体でなぞることが練習になる。そして試技を行った結果、違っていたのか合っていたのかを評価し、違っていたならなぜ違っていたのか、どうすれば合うのかを頭で考え修正する。この繰り返しで選手は強くなるが、一番はじめにこのように動こうというイメージがなければ、評価するべき基準がないようなものだから、試技がうまくいったのかどうかをタイムで測るしかない。しかしながら、タイムは体調や環境に影響されるので高いレベルでの評価基準としては適切ではない。
試合に関するイメージトレーニングは、詳細までイメージが湧くし、湧かなければうまくいかなかった。例えば、試合当日朝起きて自分はどんな気分で、地面に着いた時の感触はどうなのか。試合会場に行くバスは何色で、自分がどこに座るのか。グラウンドではどんな動きをしていつコーチに話しかけられるのか。試合に出て、緊張する中どこに家族の顔があるのか。カメラはどこか。コーチはどこか。ライバル選手はどのような表情をしているのか。ゴールして、ガッツポーズをして、その時に何が見えるのか。インタビュアーの最初の質問は何で、自分はどう答えるのか。その時自分の手は握っているのか開いているのか。涙はいつ出て、それを拭うのか拭わないのか。このようなことを詳細に渡りイメージしていた。
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