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ミャンマー、男女格差の現実

Japan In-depth / 2019年7月4日 18時0分

右側:「ソー・マー」(絵の中の女性の名)”パ・ソー(男のロンジー)とタメイン(女のロンジー)に「教え」というようなものはありません。それらはただの衣服の一部です。” 


 


ロンジーに描かれた女性たちは、そのロンジーの持ち主であり、ティン・リン氏が実際に話を聞いた方たちだ。作品には女性達の言葉がつづられている。多くの女性は、彼が躊躇すらせず彼女らのロンジーを素手で受け取ったことが衝撃だったそうだ。


 


また、会場には女性用ロンジーが吊るされて展示されていた。ミャンマーでは、女性用ロンジーが吊るされている下に座る人は誰もいないという。このように、ティン・リン氏の男女差別に対する思いや訴えが、彼の作品だけでなく会場にも込められていた。


 



写真)天井から吊るされて展示されているロンジー 


(C) Japan In-depth編集部


 


そしてプロジェクトの最大作品、「あなたはどう思う?」 は何枚ものロンジーをつなぎ合わせて作成された巨大な女性の頭部であり、中に入れるようになっている。ティン・リン氏の「あなたが自分の運気を気にしないなら、この中にどうぞ」というコメントが添えられており、ロンジーの下を通ると運気が下がると考えるミャンマーの男性を試す作品となっている。



写真)ティン・リン氏の作品 「あなたはどう思う?」 


(C)Japan In-depth編集部


 


ところが、ミャンマーのヤンゴンで個展を行った際、「これは大仏様に女性のロンジーを被せているのではないか」とSNS上で大炎上した。個展を開催したリバーギャラリーには石が投げ込まれるなどし、多くの批判の声が上がった。もし本当に大仏の頭にロンジーを巻きつけていれば、ミャンマーでは不敬罪に当たるため、一時大騒ぎとなった。しかし実際には、女性の頭部の模型にロンジーを巻きつけているだけである為、ことなきを得た。ミャンマーでの男尊女卑の激しさと、この不平等なミャンマー社会を批判する活動に伴うリスクが顕著に現れた出来事だった。


 


 


今回の個展は、ロンジーを使用した男女の格差を訴える作品だけではなく、ティン・リン氏の7年間に及ぶ牢獄生活の「囚人シリーズ」も展示された。そもそも、彼は反政府活動の容疑で刑務所に収監されたのだが、彼自身が直接反政府活動に力を入れていた訳ではなかったという。反政府活動をしていた友達の息子がデモを起こそうとし、その際に送った手紙にティン・リン氏の名前が記載されていた。それが逮捕要因となり、彼は刑務所に送られた。しかし、この服役中に作成した反政府的絵画は300点を超え、ティン・リン氏のアーティストになる原点となった。  


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