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パフォーマンス理論 その16 集団について

Japan In-depth / 2019年7月11日 7時0分

 


集団が伸びる瞬間は、不思議と1番手ではなく、中堅ぐらいの選手が一気に伸びてムードを作り、みんなが伸びる。面白いのはスター選手が伸びても大した影響がないことだ。人間は、無意識のうちに自分をカテゴリーの中に入れている。特にスポーツは日々相手と対戦するので、自分の位置をいやが応にも認識させられる。そうして、スター選手はいつの間にか”あいつは違うから”という言葉で違うカテゴリーに入るようになる。違うカテゴリーの選手が活躍しても、人はさほど悔しくないし追いかけようとも思わない。ところが昨日まで自分と同じだった存在が活躍するとそうはならない。悔しさも大きいし、自分と昔は同じだったのに自分は何をやっているんだという気持ちと、あいつにやれるなら自分にもやれるんじゃないかという希望が生まれてくる。そしてそのうち幾人かが、本当に目標を達成し、チーム全体が伸びていく。要はリアリティのあるサクセスストーリーが生まれると、集団が活性化する。


もし自分が属する集団が視座が低く、かつ自分はその集団から離れられないとしたらどうしたらいいか。私のアドバイスは、付き合いはほどほどに、自分は違う人生を生きるんだと日々言い聞かせながらしのぐことを進める。理想を言えば、チームを変え、チームメイトの意識を変えみんなで活躍することだと思う。チーム競技であれば勝つためにこれが必要になるし、自分がリーダーをやっていれば間違いなくそうすると思う。一方で個人競技の場合、チームの助けはいらない。さらに時間がない。例えば私の代表時代は2000-2008の8年間しかない。たった8年間で、どこまでいけるかが競技者としての人生の成否を分ける。ドライに聞こえるかもしれないが、特にある年齢を超えたら視座が低い人間を変えるのに相当な労力が必要なので、距離を置くべきだ。そして視座が高い集団を見つけ、チャンスを探しそこになんとかして食い込むべきだ。


私はなんとなく停滞すると所属する集団を変えていたが、今考えるとそれは比較対象ができてすごく良かった。世界一の選手がチームにいたが、練習時間も曖昧で、食事も適当だったが、この瞬間という時に出る集中力と力が全然違った。それ以来いつも緊張感があるチームが逆に形式主義的に見えて本物に見えなくなった。いずれにせよなんでもいいので一度は質の高い本物の集団を見ておくことを勧める。それがないとすごくない集団をすごいと思ってしまったり、どこにも必ず弱点があるがその弱点に不満を言う人間になってしまう。どの集団に行っても愚痴ばかり言う人間は、集団に期待をしすぎている。先のロジックで、集団に自分を変えてもらいたいと思っている人間を、質の高い集団は求めていない。


最後になるが、集団は危険でもある。特に群れは居心地がよく、人間を安心させるが一方で馴れ合いも生み出す。私は弱い人間だったので、集団にいるとつい安心して変化できなくなってしまうところがあったので、集団に属しながらも完全に集団と一体になりきらないように注意をしていた。群れは魅力的だが、群れは人を弱くする。寂しい人間だと言われたこともあるが、私のような性格にはこのような基本姿勢は競技力向上には一定の効果があったと思っている。


 


トップ写真)Pixabay Photo by vait_mcright


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