国際テロとも戦えぬ日本 集団的自衛権の禁止とは 5
Japan In-depth / 2019年7月9日 11時33分
▲写真 人道復興支援のためイラクに派遣された陸自は他国部隊に護衛された。 出典:Wikimedia Commons; Rikujojieitai Boueisho
2005年には時の日本政府が国連安保理の常任理事国入りを真剣に試みた。この動きに対しアメリカ国務省のニコラス・バーンズ国務次官は日本支援の要件として「国連の平和維持活動に軍事的に寄与できる軍事能力の保持」という条件をあげた。日本が自国は集団的軍事行動を自らに禁じているのに、国連安保理の常任理事国として他国にはその同じ行動を求める立場に立つのはおかしい、という意味の指摘だった。
2005年7月にはヘリテージ財団が再び日米同盟の強化についての報告書を出し、その最大の障害は日本側の集団的自衛権の行使禁止だと強調した。現状のままでは日本は同盟相手のアメリカが進めるグローバルかつ地域的な安保活動に協力できないとして、時のブッシュ政権が日本側に憲法第九条の解釈変更によって集団的自衛権を解禁することを求めるよう提案していた。
2006年には北朝鮮の核兵器開発をはじめとする挑発的な行動がさらにひどくなった。中国も軍拡をさらに進め、海洋領有権の拡大をもいっそう野心的に推進するようになった。アメリカはこうした動きへの抑止の対応を迫られ、そのためには日本にもより多くの、できれば対等な同盟パートナーとしてのフルの防衛協力を求めるようになったのだった。
日米両国間では共同のミサイル防衛を開発する計画も実行に移された。だがその過程でもまたまた日本の集団的自衛権の行使禁止がアメリカ側から批判的に提起された。北朝鮮が発射した弾道ミサイルも、日本は自国領土に落ちてくることが確実なときだけしか迎撃できず、アメリカ領土に向かいそうなミサイルには手出だしはできないという構図への不満だった。
2006年10月、ワシントンのもう一つの大手シンクタンク「AEI」が北朝鮮のミサイル迎撃のための日米共同努力は日本の集団的自衛権の禁止により大きく妨げられているとする報告書を発表した。「日本のその権利の禁止はアメリカにとって受け入れ難い負債だ」とまで断定し、日本側にその解禁をはっきりと要求していた。
要するに、アメリカ側からみれば、日本の集団的自衛権の行使禁止は日米同盟の深奥部に刺さったトゲなのである。いやトゲ以上に同盟の機能を構造的に抑えつけ、ゆがめ、アメリカ側だけに一方的な負担や犠牲を強いる原因ということになるのだ。
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