国際テロとも戦えぬ日本 集団的自衛権の禁止とは 5
Japan In-depth / 2019年7月9日 11時33分
ただしアメリカ政府当局が公式かつオープンな形で日本政府に集団的自衛権の行使容認を求めることはなかった。一国の防衛政策の根幹、まして憲法という大きな課題にからむ案件で他国が露骨に要求や指示をすることは不適切だという判断からだろう。あからさまな内政干渉という印象さえ与えかねない。
それよりもさらに大きな要因としては日米同盟のアメリカにとっての重要性があげられる。アメリカ全体にとってアジアへの関与、そしてアジアの安定は不可欠である。その安定を保つための最大の手段は日米同盟の堅持だろう。いま確実に機能しているその日米同盟に根本にかかわる不満をぶつけて、同盟自体の機能を危うくするリスクは冒したくないという配慮だともいえよう。しかしトランプ政権はその自制自粛を破って、あえて日米同盟への不満を述べるにいたったわけである。
▲写真 日米安保条約は不平等だと繰り返し指摘するトランプ大統領。写真はG20大阪サミット時の日米首脳会談(2019年6月27日)出典:flickr; The White House
しかしアメリカ側にこれほど広く深く、しかも長年の間、定着した不満は日本にとってまた別の重大な意味を持つ。日本はなにしろいざという際の自国の防衛をアメリカに委ねているのだ。アメリカ側が万が一にも、日米安保条約による日本防衛の責務を果たすことに疑問を感じ、その誓約を果たさないという道を選んだとき、日本の防衛はまったくの弱体となってしまうのである。その場合は日本は中国のような異端の大国からの攻撃に対しても、あっさりと降伏してしまう以外に選択肢はなくなってしまう。国家としての独立も主権も失うのである。こんなリスクを冒してもよいのか。
アメリカ国民一般が日米同盟の真相を認識し、こんな不公正、不平等の同盟はもう止めてしまえ、という声を出す可能性もあるのだ。なにしろアメリカが他の諸国と結ぶ同盟のきずなでは、こんな片務的な関係はどこにも存在しないのである。
(1、2、3、4の続き。6につづく)
トップ写真:同時多発テロ。ユナイテッド航空175便がツインタワー南棟に突入した瞬間(2001年9月11日ニューヨーク)出典:flickr; Robert (See my albums)
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