ベルファスト合意成る、しかし 悲劇の島アイルランド その6
Japan In-depth / 2019年7月11日 11時0分
げんに、仲間を殺されたIRAは、怖じ気づくどころか復讐の鬼と化し、1990年代に入るや、テロを一段とエスカレートさせたのである。
おかげで私までが危なかった、などという話は今さらどうでもよいのだが、こうした「力の解決」という路線は、程なくその破綻が明らかとなった。
IRAの側も、爆弾テロをいくら繰り返しても、一般市民に見放されるだけで政治的には逆効果だと気づいたのだろう。前述の総選挙で、保守党メージャー政権が勝利し、国民の信任を得た形となってからは、和平交渉が本格的に進められたのである。
▲写真 IRA 出典:Flickr;National Library of Ireland on The Commons
後に明らかになったことだが、IRAによる爆弾テロが頻発している間、爆破予告とイタズラ電話を区別するため、警察との間で極秘の暗号が取り決められていたという。
当然ながら、取り決めに応じたIRAの側にも、なんらかのメリット(おそらくは)受刑者の待遇改善など)があったと思われるが、いずれにせよ、テロと弾圧の連鎖が無限に続くのでは、と思われる中、和平交渉を始める下地はちゃんと作られていたわけで、このあたり、英国人はやはりしたたかだと思わずにはいられない。
かくして1998年4月10日、ベルファスト合意が成立。
カトリック、プロテスタント双方の政党が参加する北アイルランド政府・議会が新たに立ち上げられ、英軍の大半は撤退。一方、IRAはテロ路線を公式に放棄し、アイルランド共和国でも、国民投票を経て憲法の一部を改正し、アルスター6州=北アイルランドに対する領有権の主張を放棄した。
これで八方丸く……と行けばよかったのだが、いつの時代、どこの国にも分からず屋というのはいるものだ。
IRAの内部で、テロ放棄と和平合意をよしとしない一部の者が「真のIRA」と称する別派を旗揚げし、散発的ながら反英テロを引き起こしている。そこへもってきて,ブレグジットを巡って、アイルランド全土がなにやらきな臭くなってきた。
宗教対立と格差問題に翻弄され、悲劇の歴史に彩られたこの島国が、本当に「世界一住みやすい国」の評価を確立できるのは、いつのことだろうか。
トップ写真:血の日曜日事件 追悼日に遺族によって捧げられた旗と十字架 出典:Wikimedia Commons; SeanMack
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