双務の防衛こそが日本を守る 集団的自衛権の禁止とは 6(最終回)
Japan In-depth / 2019年7月11日 23時0分
さて時計の針を現在に向けて、もっと回してみよう。
トランプ政権が登場して4ヵ月ほど、2017年5月上旬のことである。
「日本の憲法第9条が日米同盟を侵食する――」
こんな批判がアメリカの大手新聞ウォールストリート・ジャーナルの社説に掲載された。これまた激烈な内容だった。
「日本にとって憲法9条は同盟国のアメリカとの集団防衛を阻止するため、危険となりつつある」
北朝鮮や中国の軍事脅威がこれほど顕著な現在、日米両国は共同で防衛や抑止に対処すべきなのに、日本のその集団防衛を阻む憲法9条は日本の安全保障にとって危険となった、という骨子の社説だった。
アメリカでも最大級部数を誇る同紙の社説は「日本の憲法の賭け」という見出しで、「日本は自国が攻撃を受けていなくてもアメリカとの共同の軍事行動のとれる攻撃能力を有する軍隊が必要となったのだ」とまで断言していた。
日本の集団的自衛権行使容認へのアメリカ側の求めは、このように日米同盟の真髄部分からの強い要請が長い年月をかけて、ひたひたと迫ってきた末の帰結なのである。日本としては日米同盟をこんごも長期に堅持するという道を選ぶのであれば、もう不可避に近い選択だとさえいる。
日本の安全保障はもちろん日米同盟からの要請だけですべてを律する必要はないだろう。だが日米同盟を無視してはいまの日本の安全保障は考えられない。
そのうえ、さらに重要な事実がある。
日本の安全保障を左右する国際環境をいま眺めると、戦後でも最大の危機を迎えたことが明白なのだ。日本国の危機である。その主要な原因はいうまでもまく中国の軍事動向であり、対日戦略である。北朝鮮の核やミサイルの脅威も消え去っても、減ってもいない。韓国までが日本への敵視を強めてきた。
こうした危険な国際環境のなかで日本が自国を守るために防衛の強化を実行に移すことは主権国家としての自立や安定を重視する限り、あまりにも明白な急務だろう。戦争や侵略を防ぐための防衛力の強化なのである。この強化には集団的自衛の権利を行使できるようにしておくことが当面、最も有力な手段なのである。
これまでの個別的自衛権だけの下では、日本は自国領土に直接の攻撃を受け、しかもその攻撃が「組織的かつ計画的な武力侵害」であることを確認できた場合だけ、防衛出動しての武力の行使ができるという、きわめて制限された自衛の権利しか有していない。日本国領土、領海の外では同盟国のアメリカに対しても、中国の脅威を受ける友好国のフィリピンやタイなどに対しても防衛行動の協力は一切、できないのだ。
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