パフォーマンス理論 その20 怪我について
Japan In-depth / 2019年7月15日 7時0分
怪我の時には、復帰後に大きく育てるため土壌を作るいい機会だと意識を変えることが大切だ。地道で変化が少ないがじわじわと効いてくるトレーニングをするにはうってつけだし、私は怪我の時期に作った自分の胴体周りが相当に競技力向上に効いたと思っている。せっかく怪我をしたならずっとほったらかしておいた地道な宿題をやり切るぐらいの感覚でいた方がいいと思う。
3、競技以外の関係、時間を確保する
怪我をしている時期は、かなり精神的に弱る。私も一時期本当にこのままどこかに姿を消してしまおうと思うぐらいに追い込まれた。怪我の状態は追い込まれて視野が狭くかつ時間軸も短くなるので、同じ場所で同じ人間とだけあっていると思考が堂々巡りになりワンパターン化しやすい。特に真面目な選手は正面から怪我を克服しようとしてしまいがちだ。こういう時はグラウンドにいても他の選手と自分を比べて落ち込んでしまうだけなので、グラウンドにいる時間以外は全く違うことを面白がって夢中になるぐらいがいい。グラウンドから距離をとって競技以外にも自分の人生があると自分に気づかせることで、客観的に自分の競技を見ることができそれが打開の糸口になり得る。集中よりも、むしろ距離をとることが大切だ。
もう一つの理由は精神の防衛のためでもある。競技者でカルト的な考えにハマるときは怪我やスランプなど精神的に追い込まれた時が多い。健全な時には、答えを出さないで複雑なものを複雑なまま置いておけるが、怪我をしているときは精神的に弱っているので、すっきりと世の中を説明してくれるような答えをつい縋りたくなってしまう。この時期は言い切ってくれる人や、実はみんなは知らない世の中の真実のようなものにハマりやすいをよく気をつけておく必要がある。傾向にすぎないが多様な人間と触れているとバランスを失いにくく、かつ戻ってもきやすいというのが私の経験からの学びだ。
怪我は本当に辛いが、この時期に地道な練習を繰り返し、かつ自分の動き見つめ直せれば一段階上のステージに上がる機会でもある。好調時に自分と向き合うことは難しいが、怪我の時期は自分の弱さに正面から向き合うことができ、これは自分理解の素晴らしい助けになる。怪我の時期に、選手の本当の力は試されるし、また鍛えられもしていて、競技者の真贋はこの時に分かれるのだろうと思う。
トップ写真)Pixabay Photo by shauking
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