パフォーマンス理論 その22 言葉について
Japan In-depth / 2019年7月17日 7時0分
昔、練習の内省ノートを書いていたが、最初のうちは何が事実で何が意見か自分でも区別がついていなかった。それで1日おいて一つ一つ考えて切り分けることを続けていくと、次第に違いがわかるようになっていった。私は比較的精神が安定していた選手だったと思うが、それはこの事実と意見を分ける訓練を自ら行ったことが影響していたと思う。この事実と意見を分ける練習ができていなければ、おそらくもっと状況を掴むのは苦手だったろうし、堂々巡りで悩んでいたと思う。考えることと悩むことの違いもここにあると感じている。
別の課題ではあるが、人間は羨ましいという感情をあいつは大したことがないという言葉に変えてしまうことがある。酸っぱいブドウに近い。この場合プライドの高さから羨ましいと感じていることを認められないので、違う言葉でごまかしている。周囲にはそう言っていても帰り道で自分の嫉妬心を認識していれば問題ないが、長い間自分もごまかし続けると本当にわからなくなってしまうから厄介だ。一度こじらせた選手は最後の最後まで自分の言葉が出てこない。隠すことに慣れすぎて本当の気持ちを白状することがもはやできなくなっている。本当に自分が欲しいものややりたいことも言葉にできない。感情的に辛いことは認めないように生きてきたので、どうやって言葉にしていいかすらわからなくなっている。こうした状況を打破するには、シンプルだが自分の最も認めたくないものを認め言葉にすることに尽きる。気持ちを言葉にすることはこじらせるとこのように影響が大きい。
言葉を洗練させるには、読むか聞くか書くか話すか考えるかしかない。例えばなんでもいいから頑張って100冊読めば随分言葉は変わる。できればどう感じたかを書いてみるとより精度が上がる。私は読んで考えて書くことで言葉の粒度が細かくなった。特に重要なのは質問で、どのような問いかけを自分にするかによって、どう答えるかが決まる。問いの精度が答えの精度のようなものだ。この質問に関しては、内省という項目で改めてまとめたいと思う。
言葉がうまく使えるようになれば、より正確に問題を把握でき、より正確に事実と意見を分けることができ、より正確に自分の感情を把握でき、より正確に改善できるようになる。私の競技人生後半を支えたのは言葉だったと思っている。
トップ写真)Pixabay Photo by KeithJJ
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